新型コロナ時代に心がけるシナリオプランニングの取り組み方【Stylish Ideaメールマガジン vol.234】

新型コロナウイルスの感染拡大以降、シナリオプランニングは「未来」のことではなく、「不確実なこと」を扱う手法だという本来の考えに立ち戻る重要性をお伝えしています。

そのように考え、そして現在のように私たちを取り巻く不確実性が非常に高い時代では、一度つくったシナリオを見直す必要性が頻繁に出てくる可能性があります。

「見直す」といっても、一度つくったものを完全に削除して、改めてゼロからつくることはお薦めしません。ゼロから見直すのではなく、見直しが必要になった時点で、自分たちが作成したアウトプットだけではなく、プロセスを見直しながら、

  • 想定どおりだった部分はどこか?
  • 想定外だった部分はどこか?

という振り返りをしていくことが大切だと考えます。

このステップを丁寧にやることで、外部環境に対する自分たちの見方について学習する機会にすることができるからです。

そして、このような丁寧な振り返りをするためには、振り返りしやすいようなプロセスでシナリオを作成することが大事になってきます。

では、振り返りをしやすいようなプロセスでシナリオを作成するとは、具体的にどのようにどういうことなのか?

細かい部分ではいろいろなポイントがありますが、全般的な指針としては、

「シナリオを作成するそれぞれのステップで根拠を明確にしながら作成すること」

を心がけることになります。

例えば、

  • なぜそのテーマで考えるのかという根拠
  • なぜその軸にしたのかという根拠
  • なぜその戦略オプションを重視したのかという根拠

などを、ひとつひとつ具体的に、明確にしておくことが重要なのです。

そういう根拠がない状態で作成したシナリオをあとから振り返ろうとすると、作成したシナリオが「合っていたかどうか」という視野の狭い(本来のシナリオの意図とは異なる)振り返りにとどまってしまいます。

さらに、このような振り返りをしてしまうと、「シナリオって使えない」という誤った思い込みを生み出しかねません。

そうではなく、それぞれのステップでの根拠を明確にしておけば、振り返りの際に、自分たちの思考のプロセスを具体的に振り返り、見直すところと残すところを切り分けた上で、見直しのステップに進むことができます。

シナリオを「未来」のことと考えていると、根拠なく、妄想のような未来を考えることもありだと思ってしまうかもしれません。

そうではなく「不確実なことを扱う」手法という基本に立ち返り、確実なことと不確実なことを明確に区別しながらシナリオを作成することが、新型コロナ時代に限らず、組織で活用する際に心がけるシナリオプランニングの取り組み方です。

コラム執筆者:新井 宏征(あらい ひろゆき)

株式会社スタイリッシュ・アイデア 代表取締役

東京外国語大学大学院修後、SAPジャパン、情報通信総合研究所(NTTグループ)を経て、現在はシナリオプランニングやプロダクトマネジメントの考え方を応用し、事業と組織の両面からクライアントの変革を支援するコンサルティング活動に従事。

Saïd Business School Oxford Scenarios Programmeにおいて、世界におけるシナリオプランニング指導の第一人者であるRafael Ramirezや、Shell Internationalでシナリオプランニングを推進してきたKees van der HeijdenやCho-Oon Khongらにシナリオプランニングの指導を受ける。

その内容を理論的な基礎としながら、2013年の創業以来、日本の組織文化や慣習にあわせた実践的なシナリオプランニング活用支援を行っている。

資格として、PMP(Project Management Professional)、英検1級、TOEIC 990点、SAP関連資格などを保有している。

主な著書に『実践 シナリオ・プランニング』、訳書に『プロダクトマネジャーの教科書』、『成功するイノベーションは何が違うのか?』、『90日変革モデル』、『世界のエグゼクティブが学ぶ 誰もがリーダーになれる特別授業』(すべて翔泳社)などがある。