来たるべき長期戦にシナリオプランニングをどう活用するか?【Stylish Ideaメールマガジン vol.232】
先日、スウェーデンの通信機器メーカーエリクソンのオンラインイベントを視聴しました。
その中でボリエ・エクホルムCEOがCOVID-19の対応は長期戦になるだろうが、長期戦とは短期戦の積み重ねでもあるというコメントをしていました。これは重要な視点です。
たしかに、今後COVID-19とそれに伴うさまざまな影響への対応は長期戦になるでしょう。
しかし、「長期戦」といっても、ただ単に時間が長くかかるだけではありません。3月から4月の2ヶ月間だけを思い返しても、さまざまな出来事やそれによる影響がありました。今後もこのように、数日、数週間といった単位で変化が起きる状況が続いていくでしょう。
そのような状況が積み重なった「長期戦」が今後、私たちが対応していかなければいけない現実なのです。
これまで、シナリオプランニングを「10年後」という長期の時間軸で進めていた場合、シナリオ作成後、検討した環境の変化に応じてつくり直しをする必要性をご紹介していました。
そして、つくり直しを検討するタイミングは、盛り込んだ外部環境要因が大きく変化した場合が一般的だということもご紹介してきました。
この考え方を元にすると、今の状況でのシナリオプランニングでは、状況によっては、数年や数ヶ月どころではなく、数週間、数日単位で作成したシナリオを見直さなければいけなくなることもあり得ます。
前回お伝えしたように、シナリオプランニングは長期の未来のことを考えるというよりは、「不確実性を扱う手法」です。
この基本に立ち戻れば、冒頭で紹介した「長期戦は短期戦の積み重ね」という表現はとても納得がいきますし、シナリオプランニングをどう活用すべきかも見えてくるのではないでしょうか。
コラム執筆者:新井 宏征(あらい ひろゆき)

株式会社スタイリッシュ・アイデア 代表取締役
東京外国語大学大学院修後、SAPジャパン、情報通信総合研究所(NTTグループ)を経て、現在はシナリオプランニングやプロダクトマネジメントの考え方を応用し、事業と組織の両面からクライアントの変革を支援するコンサルティング活動に従事。
Saïd Business School Oxford Scenarios Programmeにおいて、世界におけるシナリオプランニング指導の第一人者であるRafael Ramirezや、Shell Internationalでシナリオプランニングを推進してきたKees van der HeijdenやCho-Oon Khongらにシナリオプランニングの指導を受ける。
その内容を理論的な基礎としながら、2013年の創業以来、日本の組織文化や慣習にあわせた実践的なシナリオプランニング活用支援を行っている。
資格として、PMP(Project Management Professional)、英検1級、TOEIC 990点、SAP関連資格などを保有している。
主な著書に『実践 シナリオ・プランニング』、訳書に『プロダクトマネジャーの教科書』、『成功するイノベーションは何が違うのか?』、『90日変革モデル』、『世界のエグゼクティブが学ぶ 誰もがリーダーになれる特別授業』(すべて翔泳社)などがある。