COVID-19時代のシナリオプランニング実践のために考えること【Stylish Ideaメールマガジン vol.231】

COVID-19に伴うさまざまな不確実性の影響から誰もが逃れられない今、シナリオプランニングの重要性はますます高まってきています

ただし、シナリオプランニングはあくまでもいろいろな手法のひとつです。

そのため、現在のような「緊急時」だからこそ、前回のメールマガジンでもご紹介したようなこの手法の正しい理解が欠かせません。

前回のメールマガジンでもお伝えしたような大きな指針のようなものの理解もさることながら、

  • シナリオプランニングがつくられた経緯
  • シナリオプランニングがつくられた目的
  • シナリオプランニングに込められた本質

などの理解なしには、このような状況において、「これまでどおりのやり方で行えるところ」と「やり方をアレンジするべきところ」を明確に区別することが難しいかもしれません。

具体的に考えてみましょう。

シナリオプランニングの取り組みの最初には、シナリオテーマと呼ばれる、どのような範囲でシナリオを描くかを検討する枠組みを決めます。

この時に、どれくらい先のことを考えるかを決めるのですが、今の時期、この時間軸をどのように設定すれば良いのでしょうか。

「シナリオプランニングは長期のことを考えるものだから」というだけの理解で、例えば、5年後、10年後という時間軸だけを設定して取り組んでいないでしょうか?

そう考えてしまっている場合、シナリオプランニングは「不確実性を扱う手法」だという理解が抜け落ちている可能性があります。

COVID-19以前の世界における企業にとっては、たしかに5年後、10年後といった先のことが「不確実」な世界でした。

しかし、今の私たちが置かれている状況では、不確実なことはもっと目の前で起きています。

このような私たちが置かれている状況と、シナリオプランニングの本質を照らし合わせ、更にこの時期にシナリオプランニングに取り組む目的なども明確にした上で、テーマ設定を考えなくてはいけないのです。

もちろん、COVID-19時代だからといって、従来のシナリオプランニングと全く違うやり方をするというわけではありません。

むしろ、こういう時代だからこそ、本来のやり方に忠実でいながら、置かれている環境や取り組む環境を考慮して微調整しながら設計していかなければいけません。

このように既存の枠組みを当てはめるのではなく、環境を踏まえて柔軟に考えるということは、シナリオプランニングに求められる頭の使い方そのものだということに気づくはずです。

今こそ型にはまった考えに頼ることをやめ、ゼロから考えていくことが、シナリオプランニングの設計と実行の両方で求められているのです。

コラム執筆者:新井 宏征(あらい ひろゆき)

株式会社スタイリッシュ・アイデア 代表取締役

東京外国語大学大学院修後、SAPジャパン、情報通信総合研究所(NTTグループ)を経て、現在はシナリオプランニングやプロダクトマネジメントの考え方を応用し、事業と組織の両面からクライアントの変革を支援するコンサルティング活動に従事。

Saïd Business School Oxford Scenarios Programmeにおいて、世界におけるシナリオプランニング指導の第一人者であるRafael Ramirezや、Shell Internationalでシナリオプランニングを推進してきたKees van der HeijdenやCho-Oon Khongらにシナリオプランニングの指導を受ける。

その内容を理論的な基礎としながら、2013年の創業以来、日本の組織文化や慣習にあわせた実践的なシナリオプランニング活用支援を行っている。

資格として、PMP(Project Management Professional)、英検1級、TOEIC 990点、SAP関連資格などを保有している。

主な著書に『実践 シナリオ・プランニング』、訳書に『プロダクトマネジャーの教科書』、『成功するイノベーションは何が違うのか?』、『90日変革モデル』、『世界のエグゼクティブが学ぶ 誰もがリーダーになれる特別授業』(すべて翔泳社)などがある。