対話に"スペース"を与えるシナリオの作り方【Stylish Ideaメールマガジン vol.262】

シナリオプランニングで2本の軸を使って複数シナリオをつくる場面になると、ほぼ毎回受けるのが軸の抽象度に関する質問です。

軸をつくるときに抽象度が高い方が良いのか、抽象度が低い、具体的な方が良いのかという質問です。

元も子もない回答ですが、「複数シナリオをつくる」という観点からは、どんな抽象度でも良いのです。

ただ、「複数シナリオを使う」という観点から考えると、抽象度が高い方が良いのです。

シナリオプランニングに取り組む目的は、単に複数シナリオなどのアウトプットをつくることではありません。

以前のコラムで書いたように、シナリオ作成や作成したシナリオを活用して、組織や個人の「枠組み」や「認識」を柔軟にし、アップデートしていくことが、本来、シナリオプランニングに取り組む目的です。

・シナリオプランニングを繰り返すことで見直される2つのもの

シナリオプランニングに取り組む目的をそのように位置づけた場合、なぜ抽象度が高い軸にした方が良いのでしょうか。

組織における「複数シナリオを使う」場面のうち代表的なものは、一部のメンバーで作成した複数シナリオなどを、他の組織のメンバーが読み、自社の今後やそれを踏まえた対応について対話をするというもの。

この時、つくられた複数シナリオを読むメンバーが、それをつくったメンバーと同じような視野や視点、視座を持っているとは限りません。

そのような場合、複数シナリオを読むメンバーの反応は大きく次の3つのパターンに分かれます。

(a) これは自分に関係ある!
(b) これが自分に関係があるかどうかわからない…
(c) これは自分には関係ない

この3つのパターンを前提としたとき、複数シナリオの軸として抽象度が低いもの、つまり具体的なものを設定してしまうと、(c)の反応をする人が出やすくなります。

例えば、書かれている具体的な軸を見て、

「ここに書かれている軸の世界は、今の自分の業務や立場には関係ない」

と受け取ってしまうのです。

一度、このように受け取られてしまうと、そこから将来の起こり得る可能性や、それを踏まえた自社としての対応策を検討する際、他人事のように考えるしかなくなってしまいます。

そのようにならないために工夫する余地としては、ワークショップの設計や、ワークショップ中のファシリテーターの働きかけなど、さまざまな点があります。

そのような中、複数シナリオをつくる時点で盛り込むことができる工夫のひとつが、抽象度の高い軸を用意することです。

そうすると、自分の業務や立場に直接結びつけることがしにくいため、先ほどの3パターンでいえば、(b)の反応をする人が多くなります。

「これが自分に関係があるかどうかわからない…」となっているところから、自社や自分の業務との関係を考えることで、これまで考えていなかった外部環境の影響などに目を向けることができるようになります。

もちろん、抽象度の高い軸で複数シナリオをつくったとしても(あるいはつくったからこそ)、(c)の「これは自分には関係ない」と反応する人が出てくる可能性は大いにあり得ます。

しかし、抽象度が低い、具体的なものを見て「関係ない」と反応するのとは、本質的に違います。

抽象度が低いものを見た時の「関係ない」という反応は、具体的な言葉と自分の業務や役割等を表す言葉を具体的につき合わせた結果として「関係ない」という判断をくだしている場合がほとんどです。

一方、抽象度が高いものを見た時の反応は、多くの場合、(b)の「これが自分に関係があるかどうかわからない…」という印象をへ経て、「わからないから、これは関係ない」と考えています。

そのため、抽象度が高いものの方は、まだ自分の業務や役割との関係を考えてもらう余地が残っている「関係ない」という状態なのです。

この状態をどうにかしていくためには、先ほど書いたように、例えばファシリテーターの働きかけなどで対応していくことができます。

このように、すぐに「これは自分に関係ある!」とはなるとは限らないものの、かといってすぐに「これは自分には関係ない」と結論づけられてしまわないようなものが「対話に"スペース"を与えるシナリオ」です。

では、どういうものが「対話に"スペース"を与えるシナリオ」なのかというと、一般的に言えるような基準はありません。

なぜなら、それはシナリオプランニングの取り組みに参加するメンバーや、それを読むメンバーの状態、その組織の文化、置かれている状況などによって、それぞれ変わってくるからです。

そのため、複数シナリオの軸の抽象度は高い方が良い、あるいは低い方が良いというようにルールのように考えてしまうよりも、

「今の自分たちにとって、対話に"スペース"を与えるようなシナリオにするためには、どのような軸を設定すれば良いか?」

という問いを設定して考えることから始めてみてはいかがでしょうか。

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単に複数シナリオをつくって終わりにしないためにも、プロジェクト等の設計時点からご相談いただくことをお薦めしています。