チームビルディング:シナリオ・プランニング活用シリーズ5【Stylish Ideaメールマガジン vol.260】
今回も「シナリオプランニング活用シリーズ」を続けていきます。
※「シナリオプランニング活用シリーズ」って何?という方は、バックナンバーをご覧ください。
これまでシナリオプランニングを活用してパーパスや事業を検討していく話をしてきました。
今回取り上げるのはチームビルディングのためのシナリオプランニング活用です。
これまで紹介してきたパーパスや事業とは違い、チームビルディングとシナリオプランニングは、なかなか結びつきにくいかもしれません。
しかし、チームビルディングにおいて、シナリオプランニングを活用することは、他の手法やツールにはないメリットがあります。
それは、未来におけるチームのあり方を思い描きやすいというメリットです。
シナリオプランニングの考え方を使ってチームビルディングに取り組む場合、予め作成した複数シナリオを使った対話を中心に進めていくことが一般的です。
チームビルディングを目的として対話を行う際、過去を前提にすると、その組織での在籍期間の違いが、対話のしにくさにつながることがあります。
例えば、在籍期間の短い人が、長い人の話しを一方的に聞かされるというような状態です。
また、現在を前提にした設定にすると、在籍期間に加えて、組織内での役職や役割の違いが話しにくさを生むことも少なくありません。
シナリオプランニングの取り組みで作成した複数シナリオを使って対話は、過去でも現在でもない、将来のことを前提として対話になります。
そのような前提があるからか、複数シナリオを活用した対話は、経験や立場を超えて、誰にとっても話しやすい対話の場になりやすいのです。
そのような対話の場にするためには、その組織にとって考える意義がある複数シナリオを用意することは必要になりますが、そのような複数シナリオが用意できていればオンラインでも実施しやすいというメリットもあります。
社会構成主義を唱えるケネス・J・ガーゲンは著書の中で「自分たちの理解のあり方について反省することが、明るい未来にとって不可欠である」と述べています。
その上で、ガーゲンはこの反省(著者の中では「自省」と訳されています)について、次のように定義しています。
自分がもっている前提を疑問視し、「明らかだ」とされているものを疑い、現実を見る別の枠組みを受け入れ、さまざまな立場を考慮してものごとに取り組む姿勢。
(出所:『あなたへの社会構成主義』 )
将来における複数の可能性を表したシナリオを対話の題材として使うことで、自分たちが持っている前提を見直しやすくなります。
新型コロナウイルス感染症の拡大によって、チームや組織の働き方も影響を受けています。
在宅勤務だけではなく、場所に関係なく仕事をするWFA(Work From Anywhere)という言葉も出てきている今、組織やチームのあり方も大きく変わってきています。
そのような中で、未来に目を向けて、不確実な環境変化の可能性を取り込みながら、組織やチームのあり方、そして、その中における個々のメンバーのあり方を対話することが、「明るい未来」をつくる第一歩になるのです。
コラム執筆者:新井 宏征(あらい ひろゆき)

株式会社スタイリッシュ・アイデア 代表取締役
東京外国語大学大学院修後、SAPジャパン、情報通信総合研究所(NTTグループ)を経て、現在はシナリオプランニングやプロダクトマネジメントの考え方を応用し、事業と組織の両面からクライアントの変革を支援するコンサルティング活動に従事。
Saïd Business School Oxford Scenarios Programmeにおいて、世界におけるシナリオプランニング指導の第一人者であるRafael Ramirezや、Shell Internationalでシナリオプランニングを推進してきたKees van der HeijdenやCho-Oon Khongらにシナリオプランニングの指導を受ける。
その内容を理論的な基礎としながら、2013年の創業以来、日本の組織文化や慣習にあわせた実践的なシナリオプランニング活用支援を行っている。
資格として、PMP(Project Management Professional)、英検1級、TOEIC 990点、SAP関連資格などを保有している。
主な著書に『実践 シナリオ・プランニング』、訳書に『プロダクトマネジャーの教科書』、『成功するイノベーションは何が違うのか?』、『90日変革モデル』、『世界のエグゼクティブが学ぶ 誰もがリーダーになれる特別授業』(すべて翔泳社)などがある。