シナリオプランニングにおける戦略オプション:シナリオプランニング活用シリーズ2【Stylish Ideaメールマガジン vol.257】

前回から「シナリオプランニング活用シリーズ」というシリーズを始め、前回はパーパスについてシナリオプランニングとの関係から紹介しました。

・不確実な時代に耐えるパーパスを検討する:シナリオ・プランニング活用シリーズ1

書き終えてから原稿を読み返している中で、シナリオプランニングの活用につなげていく戦略オプション検討の部分の解説を丁寧にした方が良いのではないかと思い立ちました。

そこで順番が逆になりますが、前回のパーパス、そして次回以降の「活用シリーズ」を読み解きやすくするために、今回は改めてシナリオプランニングにおける戦略オプションを取り上げて解説していきます。

シナリオプランニングの解説などを読むと、どうしても複数のシナリオをつくるところが強調されてしまいがちになりますが、組織などでの活用を考えたときには、複数シナリオをつくるのと同じくらい大事なのが、シナリオを元に戦略などを考えていくことです。

シナリオプランニングを実践する7ステップの最後に「戦略オプション検討」というステップがあり、ここで戦略を考えていくための選択肢となる「戦略オプション」を検討します。

戦略オプションを検討すると言うと、なにか複雑なことをやるような印象もありますが、実際にやることは、作成した複数シナリオを元に「そういう世界になったら自社はどうするか?」を考えていくことです。

例えば、作成した複数シナリオの中で、脱炭素化の流れが大きく進み、さまざまな規制が強化され、業界慣行も大きく変わるという世界を描いたシナリオができたとします。

このシナリオを元にして、先ほど書いたとおり、「そういう世界になったら自社はどうするか?」を具体的に考えていくのが戦略オプション検討です。

「そういう世界になったら自社はどうするか?」と考えるとき、まずは大きく次の2つの方向性から考えていくことをお薦めしています。

  • 顧客を元にした戦略オプション検討
  • 自社を元にした戦略オプション検討

1点目の顧客を元にした戦略オプション検討では、例えば既存の顧客を想定して、その顧客のニーズが複数シナリオで検討した世界になったときにどのように変化をするのか考えることから始めます。

2点目の自社を元にした場合は、自社の既存の戦略や計画、実行(準備)中のプロジェクトなどを念頭に置いて、複数シナリオで検討した世界でもそれらの戦略等が有効に機能するかどうかを考えることから始めていきます。

この2つの検討で行っているのは、「現在、自社が取り組んでいる事業の仕組みが、環境変化に伴って、どう変化するのか?」を考えることです。

この検討をとおして、今後、取り組んでいくべき顧客の新たなニーズや、自社にとっての脅威が明らかになります。

そのような検討結果を踏まえて、今後、取り組んでいくべき具体的な取り組みが「戦略オプション」なのです。

ただし、この段階で出てきた「戦略オプション」はさまざまな分野や粒度のものが入り交じっていて、実行に移すための検討も十分になされていません。

そこで、出てきた「戦略オプション」を整理し、最終的につなげていきたいもの、例えば、

  • パーパス
  • 戦略(事業、研究開発、技術、人事、DX等)
  • 経営計画
  • 事業案
  • 個人のキャリア

などにあわせて、オプションを加工していきます。必要があれば、他の分析も加えた上で、上に書いたそれぞれの成果物に落とし込みます。

ここからわかるように、シナリオプランニングを組織や個人で活用していくための材料となるのが、この「戦略オプション」です。

シナリオプランニングに取り組んでいると、どうしてもリサーチや軸の作成といった技法に関する部分にだけ目がいきがちですが、組織や個人で効果的に活用するためには、

  • 最終的な目的や成果物を見定めて、
  • それらに沿うシナリオを作成し、
  • 未来だけではなく現状の分析も行った上で、
  • 具体的な戦略オプションを検討する

というひとつひとつを、十分にこなしていくことが大事になってきます。

この点を念頭に置いて、この4つのポイントの一番最初の「最終的な目的や成果物」につなげるシナリオプランニングの活用方法について、次回以降も「シナリオプランニング活用シリーズ」でご紹介していきます。