不確実な時代に耐えるパーパスを検討する:シナリオプランニング活用シリーズ 1【Stylish Ideaメールマガジン vol.256】

これまでシナリオプランニングの手法自体の考え方や取り組み方を中心に扱ってきました。

今回からしばらく「シナリオプランニング活用シリーズ」と題して、どういう場面でシナリオプランニングを
活用していくことができるのか、その時にどんな効果が期待できるのかなどをご紹介していきたいと思います。

初回は「パーパスを検討する」際のシナリオプランニング活用について考えていきます。

最近になって「パーパス」という言葉を見聞きすることが増えてきました。

企業はもちろん、そこで働く社員についても、自身の存在意義(パーパス)を考える必要性が高まってきていると感じます。

なぜなら新型コロナウイルス感染症の拡大によってこれまでのように常に対面で話し合ったり、依頼や確認などをすることが難しくなっている今、ひとりひとりが状況に応じて、自律的に判断をし、実行することの必要性が高まっているからです。

「会社は何のために存在するのか
 あなたはなぜそこで働くのか」

というコピーでパーパスの特集をしていたハーバード・ビジネス・レビュー2019年3月号に収められたロバート E. クインの論文の中では

「リーダーの一番重要な仕事は人々とパーパスを結びつけることだ」

という一文がのっていました。

このように、今後、会社としてはもちろん、個人としてもパーパスを明確にすることは欠かせないことになりました。

では、そのように重要度が増しているパーパスをどのように考えれば良いのでしょうか。

『BCG 次の10年で勝つ経営』では、パーパス(存在意義)を、社会に対する独自の強みを通じた提供価値と定義し、次の2つの視点の重なる部分がパーパスだとしています。

【A. 我々・自分は何者か?】
     +
【B. 世界のニーズは何か?】

この組み合わせは、シナリオプランニングの基礎編+実践編などでも戦略オプション検討の際に考えるべき観点として出しているものと基本的には同じです。

そして、戦略オプション検討の際にもお伝えしているとおり、自社を深く理解することで明らかになってくるのがA。

顧客や社会を深く理解するのがBになります。

そして、このBを理解するために活用できるのがシナリオプランニングです。

『BCG 次の10年で勝つ経営』では、ビジョンやミッション等などと比べた際、パーパスを次のように位置づけています。

【パーパス(WHY)】
【ビジョン(WHERE)】
【ミッション(WHAT)】
【戦略等(HOW)】

テキストだけではわかりにくいのですが、上の4つは上下関係になっていて、パーパスが最上位に来て、それを踏まえてビジョン、ミッション、戦略などが位置づけられています。

このようにパーパスは、会社にとっての存在意義(Why)を示す役割となるものですから、ある程度の環境変化に耐えるものでなければいけません。

そのためには、上で示したパーパスを考える枠組みのBとしてあげた「世界のニーズ」はなるべく幅広い視野でとらえる必要があります。

そのため、シナリオプランニングをとおして、自分たちが日頃考えている範囲を超え、今後、起こり得る不確実な可能性を考えます

そして、そのような可能性を目の前にして、

「たとえどんな世の中になったとしても自分たちが大切にしたい価値は何か?」

と問いかけることから、自分たちにとってのパーパスを考えていくのです。

繰り返しになりますが、パーパスとは自社や個人が不確実な時代を乗り切っていく上で軸となる重要な役割を果たすものです。

自社を取り巻くさまざまな不確実な可能性を考え、たとえ自社にとって追い風となるような世界においても「自社はこれを大切にしていきたい」というものを対話をとおして見出していくことが、パーパスを考えていく上で非常に重要なのです。