不確実感性の「回路」を頭につくる-不確実感性の考え方〔後編〕【Stylish Ideaメールマガジン vol.255】
前回のメールマガジンでは、「不確実感性」をテーマとして前編をお届けしました。
・不確実な時代だからこそ不確実なことは考えられない?!不確実感性の考え方〔前編〕【Stylish Ideaメールマガジン vol.254】
行動経済学で言われている「焦点錯覚」という考え方も紹介しながら、不確実な時代だからこそ不確実なことを考える必要性が高まるわけではないことを紹介し、不確実なことに目を向ける難しさをお伝えしました。
では、どうすれば「不確実感性」を高め、一見すると自社との関連づけが難しい不確実な環境変化に敏感になれるのでしょうか。
それは、世の中で起きているさまざまな出来事を「自社/自分に関係がある」と考えるのです。
関係ないと思うようなことを関係あると考える、と言われると精神論のように感じるかもしれません。
しかし、精神論として「意識を変えましょう」というようなことを話しているのではありません。
精神論ではなく、一度、さまざまな出来事を「関係がある」と仮定してみると、次のような問いが浮かんでくることがわかります。
- その出来事は自社にはどう関係するのだろうか?
- その出来事が自社にどんな影響を与えるのか?
一方、「関係ない」と思ってしまうと、その出来事を考えることはそれで終わってしまい、それ以上、頭の中にとどまることはありません。
もちろん、「関係がある」と仮定していろいろとつながりを考えてみたものの、結局、そこまで大きな影響はなかったことがわかって終わってしまうかもしれません。
しかし、それでも十分意味はあるのです。
なぜなら、「関係がある」と仮定して、上にあげたような問いを思い浮かべ、さまざまなつながりを考えてみることで、関係をたどっていくための「回路」のようなものが頭の中にできあがります。
実際に、一見、関係ないような外部環境要因の影響を考えるシナリオプランニングに取り組むと、あとになって「新聞やニュースの見方が変わった」と話す方が結構いらっしゃいます。
そういう方のほとんどが口にされるのが、「今までただのニュースとして見聞きしていたものでもシナリオプランニングをやったあとに見ると、これが起きたら、うちの製品はどうなるか?という感じの見方をするようになった」ということ。
もちろん、時間という限りあるリソースを考えれば、すべてのニュースについて「関係がある」と考えてしまっていたら、キリがありません。
そのため、何かルールを決めてみるのもお薦めです。
例えば
- 新聞の一面にのっている出来事は毎日考えてみる
- 「月刊 新聞ダイジェスト」のようなニュースを整理した雑誌の特集を活用してみる
というようなものです。
そういう作業を、もっと目的を明確にして、幅広く取り組んでいくために行うのがシナリオプランニングの取り組みです。
逆の言い方をすれば、シナリオプランニングのワークショップをやることだけが「不確実感性」を高める取り組みではありません。
「もし、この出来事が自社に関係あるとしたら?」という問いかけから、世の中を見渡すことが、「不確実感性」を高める第一歩なのです。
コラム執筆者:新井 宏征(あらい ひろゆき)

株式会社スタイリッシュ・アイデア 代表取締役
東京外国語大学大学院修後、SAPジャパン、情報通信総合研究所(NTTグループ)を経て、現在はシナリオプランニングやプロダクトマネジメントの考え方を応用し、事業と組織の両面からクライアントの変革を支援するコンサルティング活動に従事。
Saïd Business School Oxford Scenarios Programmeにおいて、世界におけるシナリオプランニング指導の第一人者であるRafael Ramirezや、Shell Internationalでシナリオプランニングを推進してきたKees van der HeijdenやCho-Oon Khongらにシナリオプランニングの指導を受ける。
その内容を理論的な基礎としながら、2013年の創業以来、日本の組織文化や慣習にあわせた実践的なシナリオプランニング活用支援を行っている。
資格として、PMP(Project Management Professional)、英検1級、TOEIC 990点、SAP関連資格などを保有している。
主な著書に『実践 シナリオ・プランニング』、訳書に『プロダクトマネジャーの教科書』、『成功するイノベーションは何が違うのか?』、『90日変革モデル』、『世界のエグゼクティブが学ぶ 誰もがリーダーになれる特別授業』(すべて翔泳社)などがある。