錯視ならぬ「錯思」とは(未来創造日誌 230112)

今日は昨日の「Polycrisis(ポリクライシス)とは?:Global Risks Report 2023を読む [1](未来創造日誌 230111)」に続いて Global Risks Report 2023 についての記事を書こうと思っていた。

ただ、そもそもレポート自体をじっくり読む時間が取れず、別のネタで乗り切ろうとしている。

まったく、いつもの「計画錯誤」だ。

なんでいきなり難しそうなことというか、それっぽいことを言い出しているのかというと、この「計画錯誤」という言葉、今日紹介しようと思っている「錯思コレクション」というサイトにのっている言葉だからだ。

ページ内の「錯思コレクション100について」を読むとわかるとおり、この「錯思」という言葉は造語で、認知バイアスのことを「錯視」とかけて「錯思」と呼んでいる。

トップページにいくと「記憶」「意思決定・信念」「他者・自己」という3つのタブがあり、それぞれのカテゴリーに当てはまる認知バイアスがズラッと載っている。

例えば、先ほど紹介した「計画錯誤」は「意思決定・信念」のカテゴリーに含まれていて、次のような解説がのっている。

人は、過去に計画どおりに進まずに失敗した経験が繰り返しあったとしても、新たな計画を立てる際に楽観的な予測をする傾向があります。これを計画錯誤といいます。

計画錯誤が厄介なのは、失敗した経験が活かされないことです。たいていの場合、物事は計画通りには進みません。予測しなかったトラブルが生じたり、ほかの仕事が舞い込んできたりといったことが多々あります。それでも私たちは、新たな計画を立てるときに最善の状況を想定してしまいます。例題で(A)や(B)と回答した人は、これまでに締め切りに遅れたことはないですか。

https://www.jumonji-u.ac.jp/sscs/ikeda/cognitive_bias/cate_d/d_08.html

以前に『ジェネレーター 学びと活動の生成』の著者のおひとりでもある井庭崇さんと拙著『実践 シナリオ・プランニング』をネタに対談したときに、井庭崇さんのご専門であるパターン・ランゲージとシナリオプランニングのつながりとして、「名前」を付けることという共通点があるという話になった。

シナリオプランニングでは、複数シナリオを作成したあと、それぞれのシナリオを覚えたり、認識しやすくし、社内などで展開しやすくするために、各シナリオに名前をつける。これが、パターン・ランゲージにおけるパターン名をつけることと似ているというのだ。

井庭崇さんの会社 CreativeShift では次のように解説されている。

「パターン」は、いわば文法のようなものをもっており、決まったルールで書かれます。どのパターンも、ある「状況」(Context)において生じる「問題」(Problem)と、その「解決」(Solution)の方法がセットになって記述され、それに「名前」(パターン名)がつけられる、という構造をもっています。このように一定の記述形式で秘訣を記することによって、パターン名(名前)に多くの意味が含まれ、それが共通で認識され、「言葉」として機能するようになっているのです。

https://creativeshift.co.jp/pattern-lang/

ここに書かれているとおり、シナリオプランニングでも、各シナリオに名前をつけることで共通言語になりやすくなる。

話を「錯思コレクション」に戻すと、このサイトも、いろいろと拾い読みをしていると、同じような効果を感じる。

単に「あー、いつも計画どおりいかないんだよなぁ」と漫然と思っていることに「計画錯誤」という名前を与えられると、「あ、また計画錯誤だ」と起きている出来事の認識が変わる。だからといって、自分の「計画錯誤」がすぐに解消される可能性は低いかもしれないが、自覚できる精度が上がり、改善につながりやすくなる(かもしれない)。

この「計画錯誤」の他にも、「意思決定・信念」のページをつらつら眺めてみるだけでも、シナリオプランニングの取り組みを行き詰まりを自覚し、見直すきっかけが得られるかもしれない。

https://www.jumonji-u.ac.jp/sscs/ikeda/cognitive_bias/cate_d/

そして、ここまで書いてみて、これだけ書くんなら、その分レポートを読めたんじゃないかという気がしているんだけど、これにはどんな「錯思」が当てはまるんだろうか…。