Polycrisis(ポリクライシス)とは?:Global Risks Report 2023を読む [1](未来創造日誌 230111)

ぐいぐいと時間が過ぎていく。

今日は2023年最初のメールマガジンを発行。2013年に創業して書き続けてきて、今回で300号。引き続き地道に書き続けていこう。

さて、今年もGlobal Risks Reportの時期がやってきた。今日1月11日に2023年版が公開。

Twitterではさっそく今後2年と10年の期間で想定されるTop 10 Risksを紹介している。

日本語版を待ちきれず今年のレポートにザッと目をとおしてみると、今年もなかなか面白い。今年は第3章でシナリオプランニングが使われている。これはテンションが上がる。何回かに分けてこの日誌で紹介していきたい。

Polycrisis(ポリクライシス)とは何か?

初回はTwitterでも紹介されているTop 10 Risksから紹介するのが王道なのだろうけど、シナリオプランニングが使われている第3章に出ていた Polycrisis(ポリクライシス) という言葉が印象的だった上、このGlobal Risks Report 2023を読んでいく肝になる言葉だと感じたので、この紹介からはじめていきたい。

例年、Global Risks Reportではさまざまなリスクが紹介されてきた。上にのせたTwitterの画像にもあるような感じで、世界を取り巻くさまざまなリスクが個別に紹介されている。

今回のGlobal Risks Report 2023中、この言葉が大々的に紹介されている第3章の冒頭では、既存のリスク、そしてここで示されているような将来のリスクが、単独で存在しているのではなく、お互いに影響をし合うことで Polycrisis(ポリクライシス) となると解説している。

では、Polycrisisとは何かというと、同レポートではFinancial TimesのWelcome to the world of the polycrisisという記事を参照して、次のように紹介している。

a cluster of related global risks with compounding effects, such that the overall impact exceeds the sum of each part.(試訳:関連性があり、複合的な影響を持つグローバルリスクの集まりで、全体の影響がそれぞれの部分の総和を上回るようなもの)

Global Risks Report 2023

この定義に続いて、Polycrisis(ポリクライシス) を予期し、対応するために、シナリオプランニングが役に立つという話が出てくるのだが、その話は別の機会にしよう。

ここまで読むとわかるとおり、Polycrisis(ポリクライシス)とは複数のリスクがお互いに影響を与えることで、個々のリスクの総和よりも影響が大きくなることを指している。

今年のレポートでは、この Polycrisis(ポリクライシス)を視覚的に表現するために、次のような図がいくつか紹介されている。

出所:Global Risks Report 2023 58ページ

この図は、天然資源危機が生物多様性の喪失や気候変動の適用の失敗などの環境分野のリスクと相互に関連し、それが社会的なリスク(生活費に関する危機)や経済的なリスク(システム上重要なサプライチェーンのリスク)、そして地政学的なリスク(地政学的な対立)につながっていくことが示されている。

最近のシナリオプランニングの取り組みでは、リサーチした外部環境要因それぞれをひとつの要因として扱うというよりは、この図のような関係性を整理した上で軸を検討することが増えているが、それはポリクライシスを意識したシナリオをつくるためだったということがわかる。

ポリクライシスについては、このあたりもあとで読んでみる。

Polycrisisという単語は…

なお、polycrisis という単語についての日本語での投稿や記事の中に、この単語が policy と crisis の組み合わせだと紹介しているものがあるが、そうではなく poly- と crisis の組み合わせだろう。

poly- は「多」とか「複」の意味を持つもので、多言語、複数言語を扱うことができる人を指す polyglot とか、多角形を指す polygon とかにも使われている。ゲームのモノポリーとかにも含まれている mono-(ひとつの)の反対の意味。これと crisis という単語が結びついたものだろう。

念のため policy の語源を『ランダムハウス英和大辞典 第2版』(物書堂版)で調べたところ「古代ギリシアの都市国家」を表す polis にたどり着いた。

上に紹介したような図は、たしかに政策(policy)の危機(crisis)が引き起こしたものと見ることもできるかもしれないが、図の表現としても複合的にからみあっている様子が描かれているので、poly- の方がしっくりくる。