シナリオプランニングにオープンに取り組む 【Stylish Ideaメールマガジン vol.312】

メールマガジンバックナンバーシリーズ
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シナリオプランニングに限らず、新しいものを知ったり、学んだりするとき、私たちはさまざまな反応をします。

公開セミナーや企業での研修、ワークショップでシナリオプランニングをお伝えしている際に、ドキッとするのは参加者の方からの「これは使えない!」という反応です。

「使えない」という反応の背後にある2パターン 

「これは使えない!」と反応される方はさまざまですが、そういう反応をされる理由はいくつかの共通点に分けることができます。大雑把に分けると、もっとも多いのが、

  • 手法を十分に理解できていないため、適切な成果物が完成しなかったから
  • 自分が元々持っている考え方と合わなかったから

という2つです。

それぞれのパターンへの対応の違い 

1点目については、さらに「なぜ十分に理解できなかったのか」という理由を深掘りしていく必要がありますが、説明がわかりにくかった箇所についての質問を受けたり、現時点の成果物についてのフィードバックをするという対処法で、解消していくことができます。

言い換えれば、セミナーやワークショップを受けてくださっている人に対して、コンサルタントである私が対処をすれば、どうにかしていくことができるパターンです。

しかし、難しいのは後者の「自分が元々持っている考え方と合わなかったから」使えないと反応される方です。

これは、その方の考え方や信念にかかわることになるため、私がどうにかしようとしても必ずしもうまくいくとは限らないというのが難しいところです。

学習に必要な「両立思考」 

今日の「今読んでいる本」のところでも紹介する『両立思考』があります。この本の序文を、『チームが機能するとはどういうことか』や『恐れのない組織』の著者であるエイミー・C・エドモンドソンが書いています。

心理的安全性について説いたエイミー・C・エドモンドソンは、学習やチーミングについての研究を行っていますが、どちらの分野も「ともに緊張関係に満ちている」として、学習について次のように書いています。

「学習する際には、現在の知識を大切にしつつ、将来の新たなインサイトを培うためにアンラーニング(訳注:現在の知識やスキルを手放し、新しい知識やスキルを導入するための余地を作ること)をする必要がある。」
(『両立思考』6ページ)

詳しくはこの本を読んでいただければと思いますが、本書で言う「緊張関係」とは、大まかに言えば二者択一的な状況を指しています。

たしかに、上記の引用部分については、

  • 現在の知識を大切にすること
  • 現在の知識やスキルを手放し、新しい知識やスキルを導入するための余地を作ること

の両者は、二者択一で、相反するようなことに見えます。

しかし、エイミー・C・エドモンドソンは、この両者を同時にやることが学習には必要だと説いています。

アンラーニングとオープンな態度 

この両者、特に「アンラーニングする」という点は、わかりそうではあるものの、実際に「アンラーニングするぞ」と思っても、どうやれば良いのか悩んでしまいそうでもあります。

今回のメールマガジンの冒頭で、現在、コペンハーゲンのシンクタンクのオンラインコースを受けているとお伝えしましたが、昨日は初日ということで、全員が自己紹介と「このコースに対する期待」を話す場面がありました。

17人中3番目に当てられた私は、シナリオプランニングに応用したい点などを自分の期待として話しをしたのですが、当日のグループワークで一緒のグループになったある参加者は「期待を持つというよりもオープンでいたいと思う」と話していました。

(実際にグループワークでの彼女の態度はとてもオープンで、メンバーのどんな意見にも積極的に反応していました)

そのあとで改めて本書を読んで、彼女が宣言し、実践していた**「オープンでいる」という態度は、上で紹介したアンラーニングしている状態を表している**のかもしれないと思ったのです。

シナリオプランニングと「オープンでいる」こと

新しいことを学んでいると、たしかに自分が元々持っている考え方を否定されるような気分になることがあります。場合によっては、気分だけではなく、実際に否定しているものもあるでしょう。

もちろん、そういう考え方を伝えられたとき、「自分の考えは捨てて、新しいものをすぐに受け容れましょう」だと言うつもりはありません。

ただし、そのときの自分の考え方を否定するようなものでも、何らかの意味があるからこそ存在しているはずです。

ですので、新しく、自分の考え方と合わないものを伝えられた際、「これは使えない」と一気に否定側にまわるわけではなく、かといって全面的に受け容れるわけでもない立場をとるというのはどうでしょう。

「使えないとまでは言わないけど、何か受け容れがたさも感じている。ただ、何らかの意味はあるんだろう」という態度で新しい考え方に向き合うというのが、「オープンでいる」ということなのかもしれません。

そして、このようなオープンな態度で日々変わり続ける世の中の変化を眺めることが、シナリオプランニングをやる上で、とても大切なことなのではないかと思うのです。

コラムで取り上げているその他の話題

1-シナリオテーマ設定 3-重要な環境要因の抽出 4-ベースシナリオ作成 5-複数シナリオ作成 5フォース 6-シナリオ詳細分析 7-戦略オプション検討 『実践 シナリオ・プランニング』 『進化思考』 アイデアソン イノベーション オンラインワークショップ コンティンジェンシープラン シナリオプロジェクトマネジメントモデル シナリオ作成プロセス ジョブ理論 チームビルディング デザイン思考 ネガティブ・ケイパビリティ パターン・ランゲージ パーパス ビジネスモデル ビジョン メンタルモデル リーダーシップ リーンキャンバス レジリエンス ロジックモデル 不確実性 事業開発 仮説検証 対話 悪魔の代弁者 成果 成果物 戦略 戦略的対話 文化開発 未来創造ダイアローグ 焦点錯覚 現状分析 社会構成主義 組織学習 組織資源 組織開発