なぜ、シナリオプランニングを継続することが必要なのか?【Stylish Ideaメールマガジン vol.310】

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新しい年になり、この2024年をどのような一年にしようかと思いをはせたり、具体的な計画を立てた人も多いのではないでしょうか。

弊社は1月が年度始めになるため、この年末年始は自社の戦略と経営計画を考えていました。

昨今の変化を踏まえて5年後の環境変化を踏まえて5年後に目指す姿を考え、その状態を達成するために2024年には何に取り組むべきかをバックキャスティングで考えました。

シナリオプランニングの「上達」に必要なこと

以前から同じようにシナリオプランニングを活用して戦略と計画を立てていますが、年々、考える範囲や深さが変わってきているのも感じています。言い換えれば、シナリオプランニングを元にした戦略立案や計画策定が上達してきていると感じます。

上達していると感じる理由のひとつは、自社でもシナリオプランニングを元にした戦略や事業の検討をやり続けているからというのがあります。長年使い続けていることで、手法などの使い方に慣れてきたという側面もあります。

ただ、これは、シナリオプランニングを使ったコンサルティングをやっているので当たり前と言えば当たり前ですね。

ですが、それだけではない理由が2つあります。今日はその1つめをご紹介します。

上達してきていると感じる理由のひとつは、長年続けていることで、過去に検討した不確実な将来の可能性の「答え合わせ」をできるているからです。

「答え合わせ」をすることで想定外に気がつく

シナリオを検討している時点では、自分たちが「考える意義がある」と選んだものが、果たして本当にそうなのかはわかりません。しかし、シナリオやそれを元にした戦略をつくり、その戦略を実行しながら、外部環境要因の変化に継続的に目を向けていくことで、

  • 想定内だったこと
  • 想定外だったこと

を確認することができます。

特に大切なのは「想定外だったこと」に気づくこと。

単にシナリオをつくるだけではなく、それを活用し、それと合わせて実際の世の中の変化にも目を向けるからこそ気がつくのが、この「想定外だったこと」です。

さらに、この「想定外だったこと」に気づいた時点で、「なぜ、想定できていなかったのか?」という振り返りをすることで、自社を取り巻く不確実な可能性を見る目がさらに鍛えられます。

未来創造OSの肝:内省を伴ったくり返し

これが拙著『実践 シナリオ・プランニング』の中で紹介している「未来創造OS」の中にある3番目「内省を伴ったくり返し(reflective iteration)」に相当する部分です。

出所:『実践 シナリオ・プランニング』33ページ 

「未来創造OSって何?」という方もいらっしゃるかもしれないので改めてお伝えします。

 シナリオプランニングで取り組む際に大切なのは、複数シナリオ等のアウトプットをつくることだけではなく、それをつくる過程で、つくる人の頭の中に次のような変化を起こすことが大切です。

  • reframing:(物事を見ている)枠組みの見直し
  • reperception:(自分が抱いている)認識の見直し
  • reflective iteration:内省を伴ったくり返し

 図を見てもわかるとおり、1回のシナリオプランニングの取り組みでは、うまくいっても、この「未来創造OS」のうち最初の2つしか経験することができません。

 そして、その1回の体験で起きた「枠組みの見直し」「認識の見直し」がいくらインパクトがあるものであっても、日常に戻ってしまえば、容易に今までどおりのものの見方や認識に戻ってしまいます。

シナリオプランニングをくり返すことでつくる組織

そうならないようにするために大切なのが「内省を伴ったくり返し」です。

シナリオプランニング取り組みを継続し、定期的に「答え合わせ」、つまり振り返り(内省)をすることが、不確実な未来に柔軟に対応できる組織に変革し、そのような人材を育てていくために欠かせないのです。

もちろん、短期的に目に見えるような効果が出ないものを、組織の中で継続的に取り組んでいくことは簡単ではありません。しかし、言い換えれば、短期的には効果がわかりにくいものを継続するからこそ、他社と差別化できる組織にしていくことができるのです。

ぜひ2024年は、組織や個人で継続的にシナリオプランニングの取り組みを進めていく第一歩を踏み出してください。