同じようなシナリオを作ってしまうパターンからの抜け出し方【Stylish Ideaメールマガジン vol.270】

本格的なシナリオプランニングの取り組みを進める場合、『実践 シナリオ・プランニング」でも紹介した7つのステップで取り組みます。

・『実践 シナリオ・プランニング』
(7つのステップの概要を確認したい方は、ウェブ上でも公開しています

・シナリオプランニングの進め方(作成ステップ)

この7つのステップに本格的に取り組む場合、最初からそれぞれのステップをひとつずつ、確実にこなしていくことはあまりやりません。

まずはアウトプットの質は後回しにして、いったんすべて(または、ほぼすべて)のステップに取り組み、最初のアウトプットを完成させます。

そして、そのアウトプットを元にして、各ステップについての進め方の再確認はもちろん、自分たちの取り組み方などにも目を向けて振り返りをします。

このようにすることで、シナリオプランニングの取り組みの全体像をプロジェクトなどの早い段階で把握することができる上、取り組んでいる自分たちの思考のクセなどにも目を向けられるため、最初の取り組み以降は、質を高めていくことに集中することができます。

ただし、一度全体像を把握し、振り返りをしたからといって、それ以降、自動的に質が高まっていくわけではありません。

2回目以降の取り組みで質を高めるための試行錯誤をしているものの、どうしても最初の時に考えたシナリオ案にとらわれてしまい、同じようなシナリオ案ばかりをつくってしまうチームが出てくることが珍しくありません。

何度か繰り返していると、こちらが指摘せずともさすがに自分たちでも自覚できるようになり、
「どうにかして、この状況を改善したい。これまでに考えたことがないような観点をシナリオに盛り込みたい」と思うようになります。

どのようにすれば改善につながっていくのかはそれぞれの状況によって変わってきますが、このような場合にお願いしているのが、一足飛びに改善を目指すのではなくて、改めて自分たちの状況を確認することなのです。

つまり、「同じようなシナリオ案ばかり」という状況について、次のような観点から確認します。

・「同じような」内容とは具体的にどのようなものなのか?
・なぜ、そのような内容が繰り返し出てきてしまうのか?

このようなパターンは、ひと言で言えば、その人たちの「思い込み(信念、パラダイム等)」が引き起こしているということができるでしょう。

しかし、このような大まかな(ありがちな)指摘だけでは、状況の改善にはなかなかつながりません。

そのため、この状況を引き起こしている「思い込み(信念、パラダイム等)」を具体的に把握する必要があります。

そのためには、上であげた観点のひとつめのとおり、まずは目の前で起きていることを元にして、どのようなパターンが繰り返されているのかをなるべく具体的に把握することから始めます。

ある程度、パターンを具体的に把握してはじめて、その背後にあるのは、どのような「思い込み」かを探っていくことができるようになります。

シナリオプランニングの取り組みを始めてまだ日が浅いうちは、「同じようなパターンが出てきているから、別の軸を試してみよう」と、数をこなしていくことで対応できるかもしれません。

しかし、何度か取り組んでいるにもかかわらず、このような状況になってしまう場合は、安易に状況の改善のための策に走るのではなく、このような状況を生み出している自分たち側に目を向けてみることに取り組んでみましょう。

コラム執筆者:新井 宏征(あらい ひろゆき)

株式会社スタイリッシュ・アイデア 代表取締役

東京外国語大学大学院修後、SAPジャパン、情報通信総合研究所(NTTグループ)を経て、現在はシナリオプランニングやプロダクトマネジメントの考え方を応用し、事業と組織の両面からクライアントの変革を支援するコンサルティング活動に従事。

Saïd Business School Oxford Scenarios Programmeにおいて、世界におけるシナリオプランニング指導の第一人者であるRafael Ramirezや、Shell Internationalでシナリオプランニングを推進してきたKees van der HeijdenやCho-Oon Khongらにシナリオプランニングの指導を受ける。

その内容を理論的な基礎としながら、2013年の創業以来、日本の組織文化や慣習にあわせた実践的なシナリオプランニング活用支援を行っている。

資格として、PMP(Project Management Professional)、英検1級、TOEIC 990点、SAP関連資格などを保有している。

主な著書に『実践 シナリオ・プランニング』、訳書に『プロダクトマネジャーの教科書』、『成功するイノベーションは何が違うのか?』、『90日変革モデル』、『世界のエグゼクティブが学ぶ 誰もがリーダーになれる特別授業』(すべて翔泳社)などがある。