シナリオプランニングの前に取り組むべき対話とは?【Stylish Ideaメールマガジン vol.252】

新型コロナウイルス感染症の拡大は、来年になっても先が見えない日が続きそうです。

世界中すべての人が先が読めない不確実な時代に身を置いて約1年がたちました。

このような不確実性に対処していくためには、シナリオプランニングの考え方に基づいて、戦略や計画、パーパスなどをつくっていくことがますます大事になってきています。

そう考えて組織などでシナリオプランニングに取り組もうとする際、このような時期だからこそ注意しなければいけないことがあります。

それは、しばらく先の未来のことを考える前に、目の前の気になっていることに目を向ける時間を取るようにすることです。

現在のような状況でも、3年や5年といった先を見据えてシナリオを描くことは重要です。

しかし、今まさに目の前にある不確実なことが気になっているような状態で、3年や5年のことについて腰を据えて考えることはなかなか簡単なことではありません。

そのような時には、無理に3年、5年のことに目を向けるのではなく、まずは目の前で起きている気になっていることの影響を考えた方が良いでしょう。

そのための対話手法が、Futures Wheelという手法です。

直訳すると「未来の輪」という名前のこの手法、なぜ「輪」なのかというと、中心に置かれた対話のテーマから放射状にのばすような形で、自分たちが考えたことを可視化していくためです。

日本での緊急事態宣言以降、弊社でシナリオプランニングに取り組む際には、事前にこのFutures Wheelによる対話を入れています。

そうすることで、普段なら話題にしにくかった今起きていることへの不安や、今後想定される影響について口に出すことができます

そうやって頭の中にある目の前の引っかかりを表に出すことで、長い先の未来のことを腰を据えて考えやすくなるのです。

不確実だからこそ、先のことを考えたい気持ちもよくわかりますが、その効果を高めるために、まずは目の前の不確実なことについて話す機会をもうけてみてはいかがでしょうか

コラム執筆者:新井 宏征(あらい ひろゆき)

株式会社スタイリッシュ・アイデア 代表取締役

東京外国語大学大学院修後、SAPジャパン、情報通信総合研究所(NTTグループ)を経て、現在はシナリオプランニングやプロダクトマネジメントの考え方を応用し、事業と組織の両面からクライアントの変革を支援するコンサルティング活動に従事。

Saïd Business School Oxford Scenarios Programmeにおいて、世界におけるシナリオプランニング指導の第一人者であるRafael Ramirezや、Shell Internationalでシナリオプランニングを推進してきたKees van der HeijdenやCho-Oon Khongらにシナリオプランニングの指導を受ける。

その内容を理論的な基礎としながら、2013年の創業以来、日本の組織文化や慣習にあわせた実践的なシナリオプランニング活用支援を行っている。

資格として、PMP(Project Management Professional)、英検1級、TOEIC 990点、SAP関連資格などを保有している。

主な著書に『実践 シナリオ・プランニング』、訳書に『プロダクトマネジャーの教科書』、『成功するイノベーションは何が違うのか?』、『90日変革モデル』、『世界のエグゼクティブが学ぶ 誰もがリーダーになれる特別授業』(すべて翔泳社)などがある。