シナリオプランニングを組織に埋め込む【Stylish Ideaメールマガジン vol.243】

最近、シナリオプランニングを単なる手法として学んだり、使うという一過性の取り組みにとどまらず、組織内で浸透させ、内製化するところまでを見据えたご相談が増えてきました。

手法や理論としてのシナリオプランニング自体に興味があるのではなく、この手法を活用して不確実な環境変化に柔軟に対応していけるような組織をつくっていくことに関心があるのであれば、たしかに組織内での浸透や内製化は必須です。

ここで言う「浸透」「内製化」は、実際には個々のケースで具体的な取り組みは変わってきますが、概ね次のように位置づけています。

  • 浸透:研修やプロジェクトで作成したシナリオを事業部や組織全体で活用する仕組みをつくる
  • 内製化:それぞれの組織で使われている手法や業務プロセスとシナリオプランニングを組み合わせて体系化し、活用のための仕組みをつくる

わかりやすく言うと「浸透」とは、研修等でつくった内容を、研修参加者以外にも広げること

「内製化」とは、シナリオプランニングを含んだ自社独自の手法をつくり、活用することです。

どちらの取り組みでも、「手法」としてのシナリオプランニングにとどまらず、「考え方」としてのシナリオプランニングに着目した活動を進めていくことになります。

つまり、シナリオプランニングの元となっている考え方を各組織の組織文化やプロセスにあわせて、カスタマイズし、埋め込んでいく取り組みです。

もちろん、手法としてのシナリオプランニングを日々実践し、さまざまな不確実な可能性を描き、対応策を考えることは重要です。

しかし組織として重要なのは、その結果を踏まえ、各部署や各メンバーが自身の置かれている状況を各自で判断し、その判断に基づいて、自発的に行動していけるようになることです。

そのためには、手法としてどのようにシナリオをつくれば良いのかを理解し、実践できるだけでは十分ではありません。

シナリオプランニングのアウトプットや実践方法を自社の環境にあわせ、そして、それを活用する仕組みをつくっていくことが必要になります。

このようにシナリオプランニングが埋め込まれた組織になれば、「もっと先のことを考えろ!」とマネジャーが口酸っぱく言う必要はありません。

不確実な可能性を考えることが当たり前の組織をつくるために、シナリオプランニングを組織に埋め込む取り組みを始めてみませんか?

コラム執筆者:新井 宏征(あらい ひろゆき)

株式会社スタイリッシュ・アイデア 代表取締役

東京外国語大学大学院修後、SAPジャパン、情報通信総合研究所(NTTグループ)を経て、現在はシナリオプランニングやプロダクトマネジメントの考え方を応用し、事業と組織の両面からクライアントの変革を支援するコンサルティング活動に従事。

Saïd Business School Oxford Scenarios Programmeにおいて、世界におけるシナリオプランニング指導の第一人者であるRafael Ramirezや、Shell Internationalでシナリオプランニングを推進してきたKees van der HeijdenやCho-Oon Khongらにシナリオプランニングの指導を受ける。

その内容を理論的な基礎としながら、2013年の創業以来、日本の組織文化や慣習にあわせた実践的なシナリオプランニング活用支援を行っている。

資格として、PMP(Project Management Professional)、英検1級、TOEIC 990点、SAP関連資格などを保有している。

主な著書に『実践 シナリオ・プランニング』、訳書に『プロダクトマネジャーの教科書』、『成功するイノベーションは何が違うのか?』、『90日変革モデル』、『世界のエグゼクティブが学ぶ 誰もがリーダーになれる特別授業』(すべて翔泳社)などがある。