シナリオプランニングでSDGs活用を検討する【Stylish Ideaメールマガジン vol.237】

弊社では戦略立案や研究開発テーマ検討、あるいは新規事業検討といったテーマでのシナリオプランニング活用の機会が多いのですが、近年増えているのがSDGsをテーマとしたシナリオプランニング活用のお話です。

新型コロナウイルスの影響でオンライン開催にはなりましたが、今年もSDGsを踏まえた新規事業検討というテーマでシナリオプランニング研修を行いました。

企画の段階でお話をうかがってみると、これまで知識を得る機会やゲームなどに取り組み、SDGsを理解はしたものの、その理解を自社の事業と結びつけられていないというお悩みを抱えている方が多くいらっしゃいました。

たしかにSDGsの基本的な理解は必要です。しかし、SDGs自体を理解しただけでは「何か環境や社会に良いことを頑張ろう」という気持ちの面だけの変化にとどまりかねません。

SDGsの理解から事業検討につなげていくためには

  • SDGsに取り組む内部環境の見極め
  • SDGsに取り組む外部環境の見極め

が必要だと考えています。

内部環境の理解は、自社の組織資源の理解です。わかりやすく言えば「自社は何ができるのか?」を考えるために必要な理解をするということ。

一方、外部環境の理解とは、例えば今後の日本でSDGsに取り組むとして、どのようなことが課題となっていく可能性があるのかの理解です。

たしかにSDGsの17のゴールや169のターゲットはさまざまなことを考える指針にはなりますが、そのゴールをどのように実現するのか、そのためにどんな取り組みが必要なのかを考えるためには「文脈」が必要になります。

ここでいう「文脈」とは、わかりやすいところでは国が置かれている環境です。

日本におけるSDGsの取り組みを検討することと、アメリカでの取り組みの検討は、それぞれの国の環境の違いや、それが生み出す課題の違いにより、大きく変わってくるはずです。さらにひとくちに「日本」といっても、地域によって環境は変わってくるでしょう。このように「文脈」を設定し、その文脈で起こり得る課題を理解した上でSDGsの取り組みの検討を行わなければ、総花的なアイデアしか浮かばないでしょう。

この「文脈」、特にSDGsの達成年の2030年という時間設定での「文脈」を設定し、理解するために使うのがシナリオプランニングです

シナリオプランニングをとおした「文脈」の理解と、組織の内部環境の理解をあわせることで、実現可能性があるSDGsの取り組みを検討しやすくなります

SDGsの概要を理解をしたものの、自社内での展開になかなかつながらないという場合、闇雲に事例を集めるのではなく、自社の内外の環境理解から取り組んでみることを検討してみるのが良いかもしれません。

コラム執筆者:新井 宏征(あらい ひろゆき)

株式会社スタイリッシュ・アイデア 代表取締役

東京外国語大学大学院修後、SAPジャパン、情報通信総合研究所(NTTグループ)を経て、現在はシナリオプランニングやプロダクトマネジメントの考え方を応用し、事業と組織の両面からクライアントの変革を支援するコンサルティング活動に従事。

Saïd Business School Oxford Scenarios Programmeにおいて、世界におけるシナリオプランニング指導の第一人者であるRafael Ramirezや、Shell Internationalでシナリオプランニングを推進してきたKees van der HeijdenやCho-Oon Khongらにシナリオプランニングの指導を受ける。

その内容を理論的な基礎としながら、2013年の創業以来、日本の組織文化や慣習にあわせた実践的なシナリオプランニング活用支援を行っている。

資格として、PMP(Project Management Professional)、英検1級、TOEIC 990点、SAP関連資格などを保有している。

主な著書に『実践 シナリオ・プランニング』、訳書に『プロダクトマネジャーの教科書』、『成功するイノベーションは何が違うのか?』、『90日変革モデル』、『世界のエグゼクティブが学ぶ 誰もがリーダーになれる特別授業』(すべて翔泳社)などがある。