自分で自分を動かすためのシナリオプランニング【Stylish Ideaメールマガジン vol.210】
今月の頭には次の元号である「令和」が発表され、その後は「平成最後の」というセリフをいろいろなところで見聞きした1ヶ月でした。
セリフだけではなく、「平成最後の」とか「令和になる今」という類の言葉で行動を促すようなこともよく見かけました。
今回の改元のような外的なきっかけを使って、新しい行動を始めたり、今の行動を見直すことは個人でも、組織でもよく行われていることです。
きっかけを利用すると、たしかに盛り上がりますし、組織であれば、一同に方向性を合わせるための良い機会にもなるでしょう。
しかし、個人においても、組織においても、そのような「外的な刺激」に頼り続けることは冷静に考えなくてはいけません。
なぜなら、外的な刺激に頼ることに慣れてしまうと、外的な刺激がなくては動けなくなってしまうから。
そうなると、例えば、個人であれば、
- 動くためにセミナーや勉強会に参加する
ことを繰り返したり、組織であれば、
- 動くためにコンサルを呼ぶ
ようなことが常態化してしまいます。
もちろん、セミナーや勉強会に参加することや、外部の専門家を呼ぶこと、それ自体は決して悪いことではありません。
そうではなく、そういう外部の機会は、あくまで自分や自組織が動く補助的なものでしかないことに、改めて気付いていただきたいのです。
個人や組織として行動し続けていくためには、自分で自分を動かしていくしかありません。
これまで紹介したようなきっかけは、新しく動き出すきっかけにはなるでしょう。
実際に動き出す人や組織はたくさんいます。
しかし、一度動き出した後、その後も継続的に動き続ける人や組織は驚くほど少ないのです。
なぜなら、継続して動き続けるためには、
- 日々、外的な刺激を受け続ける
- 内発的な動機を元にする
のどちらかに頼るしかありません。
しかし、よっぽどの環境が整わなければ、前者のような状況が実現することはかないません。
先日リニューアルオープンした弊社のウェブでは、弊社が組織開発をどのように位置づけているのかをご紹介しています。
弊社にご依頼いただき、シナリオプランニングに取り組むことは、これまでご紹介してきた「外的な刺激」に相当するものです。
そして、弊社がかかわっている間は、皆さんもシナリオの世界観に基づいて考え、新しい計画なども作られるでしょう。
しかし、重要なのは皆さんだけで動き出す時、立案した戦略や計画を実行するタイミングです。
そのタイミングで外部からの刺激が薄れてきても、シナリオに基づいた新しい行動を実行し、その実行を続けていけるかどうか。
そのために、シナリオプランニングをとおして、外的な変化の兆候を見ながらも、自分で自分を動かしていくための機会にもする。
この事業と組織の両面から取り組む大切さを、時代が変わるこのタイミングに、改めて考えてみてはいかがでしょうか。
コラム執筆者:新井 宏征(あらい ひろゆき)

株式会社スタイリッシュ・アイデア 代表取締役
東京外国語大学大学院修後、SAPジャパン、情報通信総合研究所(NTTグループ)を経て、現在はシナリオプランニングやプロダクトマネジメントの考え方を応用し、事業と組織の両面からクライアントの変革を支援するコンサルティング活動に従事。
Saïd Business School Oxford Scenarios Programmeにおいて、世界におけるシナリオプランニング指導の第一人者であるRafael Ramirezや、Shell Internationalでシナリオプランニングを推進してきたKees van der HeijdenやCho-Oon Khongらにシナリオプランニングの指導を受ける。
その内容を理論的な基礎としながら、2013年の創業以来、日本の組織文化や慣習にあわせた実践的なシナリオプランニング活用支援を行っている。
資格として、PMP(Project Management Professional)、英検1級、TOEIC 990点、SAP関連資格などを保有している。
主な著書に『実践 シナリオ・プランニング』、訳書に『プロダクトマネジャーの教科書』、『成功するイノベーションは何が違うのか?』、『90日変革モデル』、『世界のエグゼクティブが学ぶ 誰もがリーダーになれる特別授業』(すべて翔泳社)などがある。