シナリオプランニングと風洞試験【Stylish Ideaメールマガジン vol.204】
「風洞試験」あるいは「風洞実験」という言葉を聞いたことがありますか?
風洞と呼ばれる人工的に風を発生させる装置を使い、飛行機や鉄道、自動車、建築物などの設計に活かすために行う実験のことを指します。
言葉で説明するよりも、動画を見た方がイメージがわきやすいかもしれませんね。
・Wind tunnel 風洞実験装置のビデオ - YouTube
2番目の動画のタイトルにある wind tunnel という単語が「風洞」の英訳です。
私がOxfordでシナリオプランニングを学んだ際、シナリオプランニングをやる意義を説明するのに、この wind tunnel という単語が使われていました。
最初は「なんで、風洞が?」と思いましたが、風洞を複数シナリオ、風洞の中に置く飛行機を自社の戦略に置き換えるとイメージができます。
飛行機が空を飛ぶ際に、事前にどのような風が吹くのか、完全に予測することはできません。
そのため、飛行機がさまざまな種類の風にさらされることを想定するため、風洞を使います。
風洞を使って、飛行機が遭遇する、さまざまな風のパターンを再現し、その風による飛行機への影響を観察し、飛行機の設計を見直していきます。
同様に、作成した戦略や事業計画、企画案などは、今後、どのような外部環境の変化にさらされるのか完全に予測することはできません。
そのため、戦略などが受ける影響を想定するため、風洞の代わりに、未来の起こり得る可能性を描いた複数のシナリオを活用するのです。
シナリオを使って、戦略などが影響を受ける、さまざまな外部環境の変化を再現し、影響を見極め、自社の戦略などを見直していくのです。
自社の製品やサービスは、さまざまな使われ方を想定して事前にさまざまな試験をしているのに、肝心の戦略は、過去の延長や当てずっぽうで作ってしまっているというのは、もったいない。
ぜひ、戦略や経営計画、企画を検討する際にも、シナリオプランニングを活用して、未来の影響に対する「試験」を行ってみてください。
コラム執筆者:新井 宏征(あらい ひろゆき)

株式会社スタイリッシュ・アイデア 代表取締役
東京外国語大学大学院修後、SAPジャパン、情報通信総合研究所(NTTグループ)を経て、現在はシナリオプランニングやプロダクトマネジメントの考え方を応用し、事業と組織の両面からクライアントの変革を支援するコンサルティング活動に従事。
Saïd Business School Oxford Scenarios Programmeにおいて、世界におけるシナリオプランニング指導の第一人者であるRafael Ramirezや、Shell Internationalでシナリオプランニングを推進してきたKees van der HeijdenやCho-Oon Khongらにシナリオプランニングの指導を受ける。
その内容を理論的な基礎としながら、2013年の創業以来、日本の組織文化や慣習にあわせた実践的なシナリオプランニング活用支援を行っている。
資格として、PMP(Project Management Professional)、英検1級、TOEIC 990点、SAP関連資格などを保有している。
主な著書に『実践 シナリオ・プランニング』、訳書に『プロダクトマネジャーの教科書』、『成功するイノベーションは何が違うのか?』、『90日変革モデル』、『世界のエグゼクティブが学ぶ 誰もがリーダーになれる特別授業』(すべて翔泳社)などがある。