シナリオプランニングプロジェクトの「背骨」を考える【Stylish Ideaメールマガジン vol.200】
シナリオプランニングを使ったプロジェクトに関心があるという問い合わせを受けて、お話しをうかがうと、
「シナリオプランニングを使えば、すべてが良くなるんだろうと思って…」
と期待されている方が時々いらっしゃいます。
しかし、シナリオプランニングは単なる手法です。シナリオプランニングをやるだけであらゆるものが良くなるということはありません。
例えば、シナリオプランニングをやるだけで…
・新しい事業がどんどん創られるようになった!
・経営計画がどんどん実行されるようになった!
・組織のメンバーがどんどん生き生きしてきた!
というアヤシイ広告のような効果はまったく望むことはできません。
決してシナリオプランニングがすべての課題を解決してくれるわけではないのです。
だからこそ、シナリオプランニングを使って何を解決したいのか、良くしていきたいのか、その目的を考えることからプロジェクトの検討を始めていきます。
「どうしてもシナリオプランニングをやりたい」と思っていただけるのはありがたいことです。
しかし、一度、その思いを落ち着かせつつ、無理に「目的を考えよう」と固くも考えず、「なぜ、シナリオプランニングをやりたいのか?」と投げかけてみてください。
「なぜ、やりたいのか?」から考えてみると、事業や組織といったありきたりの枠に収まらないさまざまな理由が出てくるはずです。
そうやって自由な発想を広げるところから始め、最終的な目的としてまとめていくことが大切です。
そのようなプロセスを経て動き出したシナリオプランニングプロジェクトでは、最初の時点で出した「なぜ、やりたいのか?」がプロジェクトの「背骨」となるのです。
プロジェクトをやっていると、大変なことや想定していないことがつきもの。
そういう時、借り物ではない、自分の思いに根ざした目的が、プロジェクトに取り組む意義を再認識するきっかけになるのです。
そして、そのような目的は周りの人を巻き込み、プロジェクトの勢いを加速させる燃料にもなります。
取り組みたいという思いだけで進むのでもなく、形式的な目的でお茶を濁して進むのでもなく、本来の目的を考えることに時間をかけて取り組む。
そのように始まったシナリオプランニングのプロジェクトの先には、明るい未来が待っています。
コラム執筆者:新井 宏征(あらい ひろゆき)

株式会社スタイリッシュ・アイデア 代表取締役
東京外国語大学大学院修後、SAPジャパン、情報通信総合研究所(NTTグループ)を経て、現在はシナリオプランニングやプロダクトマネジメントの考え方を応用し、事業と組織の両面からクライアントの変革を支援するコンサルティング活動に従事。
Saïd Business School Oxford Scenarios Programmeにおいて、世界におけるシナリオプランニング指導の第一人者であるRafael Ramirezや、Shell Internationalでシナリオプランニングを推進してきたKees van der HeijdenやCho-Oon Khongらにシナリオプランニングの指導を受ける。
その内容を理論的な基礎としながら、2013年の創業以来、日本の組織文化や慣習にあわせた実践的なシナリオプランニング活用支援を行っている。
資格として、PMP(Project Management Professional)、英検1級、TOEIC 990点、SAP関連資格などを保有している。
主な著書に『実践 シナリオ・プランニング』、訳書に『プロダクトマネジャーの教科書』、『成功するイノベーションは何が違うのか?』、『90日変革モデル』、『世界のエグゼクティブが学ぶ 誰もがリーダーになれる特別授業』(すべて翔泳社)などがある。