シナリオプランニングで良いシナリオを判断する基準とは?【Stylish Ideaメールマガジン vol.185】
弊社が主催する公開セミナーの参加者の方は、シナリオプランニングについて本格的に学ぶのは初めてという人がほとんどです。
そのため、これまで慣れ親しんでいるツールや思考法と違う考え方に戸惑うことが多いようです。
中でも「良いシナリオを判断する基準」についてお伝えすると、多くの方が「えっ?!」という反応になります。
その基準とは、
「これまで考えたこともなかった世界が多く描かれているシナリオが良いシナリオ」
というものです。
この判断基準を聞いて、「いや、それは 考えたことがある世界 の間違いじゃないですか?」と思う人も多いようです。
シナリオプランニングについて解説したある英語の文章では、
【シナリオプランニングとはdiscontinuousな変化に備えるための手法】
と説明されています。
discontinuous を直訳すると「不連続」とか「断絶」という訳になります。
シナリオプランニングの考え方を踏まえて意訳をすると、discontinuous というのは「想定外」と訳することができるかもしれません。
つまり、discontinuousとは、これまでの経験や常識を踏まえて、連続的に考えても出てこない「想定外」のことであり、それを考えるのがシナリオプランニングという手法だと言うのです。
そう考えると、シナリオプランニングで作成したシナリオを見たときに、
「あー、これ、考えたことがあるな」
と思ってしまうのは、discontinuousな変化とは言えません。
そうではなく、これまでには考えたことがない「想定外」の世界が現れているシナリオこそが、わざわざシナリオプランニングをやった上で考えるべきものなのです。
そうして「想定外」が含まれた世界を描き、その世界についての詳細や対応策を考えることで、「想定外」のことを「想定内」にする。
この「想定外を想定内に」していくプロセスこそが不確実な今の時代に必要なプロセスなのです。
コラム執筆者:新井 宏征(あらい ひろゆき)

株式会社スタイリッシュ・アイデア 代表取締役
東京外国語大学大学院修後、SAPジャパン、情報通信総合研究所(NTTグループ)を経て、現在はシナリオプランニングやプロダクトマネジメントの考え方を応用し、事業と組織の両面からクライアントの変革を支援するコンサルティング活動に従事。
Saïd Business School Oxford Scenarios Programmeにおいて、世界におけるシナリオプランニング指導の第一人者であるRafael Ramirezや、Shell Internationalでシナリオプランニングを推進してきたKees van der HeijdenやCho-Oon Khongらにシナリオプランニングの指導を受ける。
その内容を理論的な基礎としながら、2013年の創業以来、日本の組織文化や慣習にあわせた実践的なシナリオプランニング活用支援を行っている。
資格として、PMP(Project Management Professional)、英検1級、TOEIC 990点、SAP関連資格などを保有している。
主な著書に『実践 シナリオ・プランニング』、訳書に『プロダクトマネジャーの教科書』、『成功するイノベーションは何が違うのか?』、『90日変革モデル』、『世界のエグゼクティブが学ぶ 誰もがリーダーになれる特別授業』(すべて翔泳社)などがある。