次の10年をつくるための組織資源の重要性【Stylish Ideaメールマガジン vol.177】

どの時代にも好調な業績を上げる企業があります。

そのような現在の好業績を生み出せているのは、過去からの積み重ねの結果です。

ここで考えなくてはならないのは、この先も同じ結果を出すことができるのか?という点。

そのようなことを考える際に参考になるのが、シナリオプランニングの公開セミナーの応用編や企業でのワークショップでお伝えしている「組織資源」の考え方です。

「組織資源」の考え方は、経営学ではリソース・ベースト・ビューと呼ばれている考え方と同じものです。

この分野の泰斗であるジェイ B. バーニーの著書には、次のような解説があります。

一般に企業の経営資源とは、すべての資産、ケイパビリティ(能力)、コンピタンス、組織内のプロセス、企業の特性、情報、ナレッジなど、企業のコントロール下にあって、企業の効率と効果を改善するような戦略を構想したり実行したりすることを可能にするものである。

『企業戦略論【上】基本編 競争優位の構築と持続』

現在同様、将来も好業績を維持するためには、組織資源(経営資源)をうまく活用して、いまの事業にこだわらずに、柔軟な事業開発、事業展開を模索していくことが必要になります。

そのような事業展開をうまくやっている企業にノリタケカンパニーリミテドがあります。

ノリタケというと食器メーカーとして思い浮かべる人も多いかもしれません。

しかし、最新(平成30年3月期)の決算における事業セグメント別の売上を見ると、食器事業は全売上の約7.5%に過ぎないのです。

残りのセグメントを見ると、

  • 工業機材
  • セラミック・マテリアル
  • エンジニアリング

という3事業から構成されています。

では、彼らは食器メーカーとは名ばかりで、食器とは関係ない企業なのでしょうか?

当然、彼らはれっきとした食器メーカーです。

その彼らが今のような事業構成になっているのを組織資源という観点から読み解く鍵が、同社の採用向けWebページに載っています。

4つの事業のものがたり | ノリタケカンパニーリミテド採用情報

それぞれの事業のストーリーからわかるように、彼らは食器に関する技術開発・研究開発を通じ、そこで得た組織資源を、外部環境の変化にあわせ、うまく適用していったのです。

例えばコンデンサ内部の電極材料として使われる電子ペーストという製品があります。

これは食器に装飾を加えるためのシートである転写紙の研究開発で蓄積した印刷技術に関する組織資源を、電子回路に転用したものとのこと。

大正時代に蓄積された転写紙に関する技術が約50年後に電子回路に転用されているのです。

シナリオプランニングでは、シナリオ作成後、複数のシナリオに対して、自社の機会・脅威、そしてそれを元にした対応策を検討します。

この対応策で考えるべきことが、「変わりゆく外部環境を踏まえ、いまの組織資源をどう活かしていくのか?」ということ。

さらに、「次の10年に蓄えておくべき組織資源はどのようなものなのか?」についてもここで考えます。

1904年に日本陶器として設立されたノリタケカンパニーリミテドのような100年企業となるためには、現在の組織資源をどのように活用し、新たにどのような組織資源を蓄えていくのか。

次の10年をそのような視点から描いていくためにシナリオプランニングが重要な役割を果たします。