シナリオプランニングを使わないという判断【Stylish Ideaメールマガジン vol.173】
「金づちを持つとすべて釘に見える」という表現があります。
これは欲求5段階説などで知られているアブラハム・マズローの言葉だと言われています。
英語だと
If all you have is a hammer,
everything looks like a nail.
と言うそうです。( 参照 )
弊社ではシナリオプランニングを中心にして企業のコンサルティングをやっています。
(時々、シナリオプランニングだけの会社だと思われているのですが、実はプロダクトマネジメント、プロジェクトマネジメントと組み合わせて事業と人・組織の両面から取り組んでいます)
メールマガジンでも、ここまで毎回シナリオ、シナリオ言っていると、何がなんでもシナリオプランニングをやる会社、と思われても仕方がないところはあります。
しかし、実際にはお話をいただいてヒアリングをした結果、シナリオプランニングはお薦めしないことも少なからずあります。
弊社のシナリオプランニングの公開セミナーの応用編では、シナリオを作成するときのテーマに加えて「アジェンダ」を考えることをお伝えしています。
「アジェンダ」という呼び方は、シナリオプランニングのグルとも呼べるキース・ヴァン・デル・ハイデンの著書の中で言われている言葉で、そのまま使っています。
詳しい解説は応用編での解説や本に譲るとして、ここでは「アジェンダ」とはクライアントが抱えている課題と理解してください。
シナリオプランニングの導入を検討する際、まずはヒアリングをとおしてクライアントのアジェンダを明確にします。
そうすると、実は短期で成果を出さなければいけない状態や組織のメンバーがお互いにオープンに話せない状態など、シナリオプランニング以前に取り組むべき課題が明らかになることがあります。
シナリオプランニングの専門家だからこそシナリオプランニングを使える状態ではない時は、迷わずそのことをお伝えし、今の課題にどのように取り組むべきかをお伝えしていく。
そういうスタンスでお客さまとかかわっています。
コラム執筆者:新井 宏征(あらい ひろゆき)

株式会社スタイリッシュ・アイデア 代表取締役
東京外国語大学大学院修後、SAPジャパン、情報通信総合研究所(NTTグループ)を経て、現在はシナリオプランニングやプロダクトマネジメントの考え方を応用し、事業と組織の両面からクライアントの変革を支援するコンサルティング活動に従事。
Saïd Business School Oxford Scenarios Programmeにおいて、世界におけるシナリオプランニング指導の第一人者であるRafael Ramirezや、Shell Internationalでシナリオプランニングを推進してきたKees van der HeijdenやCho-Oon Khongらにシナリオプランニングの指導を受ける。
その内容を理論的な基礎としながら、2013年の創業以来、日本の組織文化や慣習にあわせた実践的なシナリオプランニング活用支援を行っている。
資格として、PMP(Project Management Professional)、英検1級、TOEIC 990点、SAP関連資格などを保有している。
主な著書に『実践 シナリオ・プランニング』、訳書に『プロダクトマネジャーの教科書』、『成功するイノベーションは何が違うのか?』、『90日変革モデル』、『世界のエグゼクティブが学ぶ 誰もがリーダーになれる特別授業』(すべて翔泳社)などがある。