シナリオプランニングの「使う」と「作る」【Stylish Ideaメールマガジン vol.206】

弊社の公開セミナーやメールマガジンでは、「シナリオプランニングはアウトプットではなくインプットである」ということを繰り返しお伝えしています。

これを別の観点から考えるために、まずはシナリオプランニングの実践プロセスを「作る」と「使う」に分けて考えてみます。

そして「作る」と「使う」の区別を

  • 作る:2軸を使い4象限の世界を考えること
  • 使う:作った世界を元に、既存の戦略の見直しや新たな戦略の立案などを行うこと

と定義します。

こうやって区別すると、特に企業などでシナリオプランニングの活用を検討している人は、「使う」の方がより大切だということを実感していただけるのではないでしょうか。

なぜ「使う」の方がより大切なのかというと、「使う」が定義されることで初めて「作る」の方向性などを決められるからです。

これを料理にたとえると、「使う」に相当する「食べる」が決まることで、「作る」の方向性が変わってくるということ。

仕事から帰ってきた自分が1人で「食べる」のか、大切な誰かと一緒に「食べる」のかによって、「作る」が変わると言えば実感できるでしょう。

しかし、料理ではなく経営のフレームワークや手法になってしまうと、ついつい「使う」よりも「作る」方に注意がいきがちになってしまいます。

そのため、どう「使う」のか、という本来の目的が明確にされないまま、「作る」ことそのものが目的にすり替わってしまうことが良く起こります。

こうして、「作る」ことが目的になってしまった「使われない」成果物が作られてしまうのです。

皆さんの経験を振り返ってみても、

  • 上司に言われたから作ったSWOT分析
  • 「作ることになっているから」作るWBS
  • 自社を右上に置きたいだけの謎のマトリクス

などなど、「なんだ、これは?」と言いたくなる成果物を目にしたり、ともすれば作った経験が一度ならずあるはずです。

いきなり誰かに「料理作って」とだけ言われたら即座にいろいろ浮かんでくる質問も、いきなり上司に「SWOT作って」と言われると一切出てこないのは本当はおかしな話しなのです。

弊社が公開セミナーなどでご紹介しているシナリオプランニングの実践プロセスは、7つのステップで構成していますが、そのうち「作る」は5ステップ、「使う」は2ステップ。

こうやって分けてみると、たしかに「作る」に意識が向いてしまうのも理解できます。

しかし、「作る」ためには「使う」ところが定まっていなければ、ということを思い出し、まずは目的を明確にするというところから、シナリオプランニングやそれ以外の経営手法に取り組んでいってください。

コラム執筆者:新井 宏征(あらい ひろゆき)

株式会社スタイリッシュ・アイデア 代表取締役

東京外国語大学大学院修後、SAPジャパン、情報通信総合研究所(NTTグループ)を経て、現在はシナリオプランニングやプロダクトマネジメントの考え方を応用し、事業と組織の両面からクライアントの変革を支援するコンサルティング活動に従事。

Saïd Business School Oxford Scenarios Programmeにおいて、世界におけるシナリオプランニング指導の第一人者であるRafael Ramirezや、Shell Internationalでシナリオプランニングを推進してきたKees van der HeijdenやCho-Oon Khongらにシナリオプランニングの指導を受ける。

その内容を理論的な基礎としながら、2013年の創業以来、日本の組織文化や慣習にあわせた実践的なシナリオプランニング活用支援を行っている。

資格として、PMP(Project Management Professional)、英検1級、TOEIC 990点、SAP関連資格などを保有している。

主な著書に『実践 シナリオ・プランニング』、訳書に『プロダクトマネジャーの教科書』、『成功するイノベーションは何が違うのか?』、『90日変革モデル』、『世界のエグゼクティブが学ぶ 誰もがリーダーになれる特別授業』(すべて翔泳社)などがある。