AIに丸投げできない「組織の未来」─シナリオプランニングと対話の重要性

2026年最初のコラムになります。

この年末年始は生成AI、そしてObsidianやAntigravityといったツールをいじりながら、2025年の振り返りと2026年の計画を考えたりしていました。

この年末年始に使っていたツールは、どれも10年前にはなかったものです。この中でも個人が気軽に使える生成AIの登場は特に大きな変化で、本格的に「AIの時代」になっていると実感させられます。

AIの進化により、企業での仕事も大きく変化しています。弊社がかかわることが多いシナリオプランニング手法を使ったシナリオ作成や、それにもとづいた戦略策定の領域も劇的に変化しました。

かつてAIがなかった頃に比べ、圧倒的にシナリオが作りやすい環境になったと感じます。いずれは戦略やシナリオの作成をAIに丸投げしても、十分な水準のアウトプットが出てくる時代になるはずです。

AIでも解消できない「実行」の壁

しかし、そうなったとしても組織の課題がすべて解消するわけではありません。そこにはハルシネーション対策など、AI時代特有の課題も出てくるでしょう。しかし、組織にとってもっと考えなければいけないのは、AI以前の時代から続いている課題です。

それは「いくら立派な戦略や計画を作っても、なかなか実行されない」という課題です。

かつては、コンサルティング会社に戦略策定を依頼しても、そのあとまったく実行されないと嘆かれていました。今はその作り手が「コンサルタント」から「AI」に代わっただけで、問題の根本的な状況は解消されていません。

つまり、AI時代になったとしても、私たちが重点を置かなければいけないのは、戦略やビジョン、計画などの組織にとって必要な「成果物」を作ることではなく、その成果物を使って組織をどう動かしていくかという点です。

「腹落ち」を目指す対話の必要性

そこで活用するのが「対話」です。

「対話」と聞くと、「ただ話すだけ」だったり「すでに手垢のついた言葉」という印象を持っている方もいるかもしれません。たしかに、単に会話をすることや「対話という手法」そのものが目的になってしまうと、「また対話か…」という思われても仕方ありません。

しかし、重要なのは成果を見据えた対話の設計です。そして対話による成果とは、ビジョンや戦略、計画などの成果物に対して、メンバー一人ひとりが腹落ちする状態をつくることです。

組織の構成員であるメンバーが、ビジョンや戦略を「情報として知る」だけでなく、対話をとおして「腹落ち」し、自分ごととしてとらえる。このプロセスを経て初めて、メンバーは自律的に動き、協力して戦略実行に向かうことができるのです。

対話から未来は動き出す

弊社は2013年の創業以来、シナリオプランニングという手法を核として、先が読めない時代に、自ら考え、未来をつくる人や組織をつくるご支援をしてきました。

創業した頃から取り巻く環境も大きく変わりましたが、このような時代だからこそ、未来についての対話をとおして、社員一人ひとりが自律的に動いていくような組織をつくるご支援に注力していきたいと考えています。

コラム執筆者:新井 宏征(あらい ひろゆき)

株式会社スタイリッシュ・アイデア 代表取締役

東京外国語大学大学院修後、SAPジャパン、情報通信総合研究所(NTTグループ)を経て、現在はシナリオプランニングやプロダクトマネジメントの考え方を応用し、事業と組織の両面からクライアントの変革を支援するコンサルティング活動に従事。

Saïd Business School Oxford Scenarios Programmeにおいて、世界におけるシナリオプランニング指導の第一人者であるRafael Ramirezや、Shell Internationalでシナリオプランニングを推進してきたKees van der HeijdenやCho-Oon Khongらにシナリオプランニングの指導を受ける。

その内容を理論的な基礎としながら、2013年の創業以来、日本の組織文化や慣習にあわせた実践的なシナリオプランニング活用支援を行っている。

資格として、PMP(Project Management Professional)、英検1級、TOEIC 990点、SAP関連資格などを保有している。

主な著書に『実践 シナリオ・プランニング』、訳書に『プロダクトマネジャーの教科書』、『成功するイノベーションは何が違うのか?』、『90日変革モデル』、『世界のエグゼクティブが学ぶ 誰もがリーダーになれる特別授業』(すべて翔泳社)などがある。