Futures Wheelで深めるトレンドの理解

先週はある企業の新任リーダー向けのトレーニングとして、シナリオプランニングのやり方をお伝えし、自社の将来を検討していただきました。

 さすが、リーダーになる方たちだけあって、今、話題になっているトレンドなどをよくご存じでした。

トレンドの理解をアップデートするとは?

しかし、現在のような先が読みにくい時代にリーダーとして事業や組織をけん引していくためには、そのようなトレンドを「理解している」という状態をアップデートしていかなければいけません。

 そのようなトレンドを「理解している」と答える人の中には、単に「そのトレンドを表す言葉の定義を言える」こととイコールだととらえている人もいます。

 もちろん、それ自体はまったく悪いことではありませんが、その知識を事業や組織に活かすためには、もう一歩踏み込んで理解したいところです。

 では、どのようにすれば、もう一歩踏み込んで理解することができるのでしょうか。

 それは「そのトレンドによる自社の事業への影響までを理解する」ことです。

生成AIの働き方への影響までを理解するために

 具体的な例も使いながら考えてみましょう。 例えば、「生成AI」については、このメールマガジンの読者の方であれば、よくご存じだと思います。 しかし、ここで、本や雑誌、オンラインメディアなどでよく出てくる生成AIの定義だけを理解していたり、ChatGPTやCopilotを使ったことがあるというだけでは、「影響までを理解」している状態にはなっていません。

そうではなく、例えば、

  • 自社の自分の担当業務のどこで生成AIを活用できる可能性があるのか?
  • そこで活用すると、今の担当業務はどのように変わっていくのか?
  • その担当業務が変わることで、組織の構造や人材にどのような影響があるのか? 

 というようなことまでを考えることが理想です。

 ここまでを考えると「生成AIの定義を理解しつつ、それによる働き方への影響を理解している」という状態になることができます。

 行動につながる知識の仕入れ方

さまざまなメディアを丹念に読み込み、そこで言われていることを理解することは、時代の変化についていくために重要です。そして、そのような行為が、ご自身の知的好奇心からやっていることであれば、定義として理解しているだけでも十分かもしれません。

 しかし、新しいトレンドなどを知ることを、自分の仕事、あるいは自分のキャリアに活かすためにやっているのであれば、単に知識として理解することにとどまらず、「行動につながる知識の仕入れ方」を意識すると良いでしょう。

 「行動につながる」とは、仕入れた知識を元に、意思決定の質を向上させたり、リスクを想定したり、新たな事業の検討につなげたり、従業員の満足度向上につなげるということ。

 そのためには、単に知識として仕入れて終わりにするのではなく、理解の対象が自社、あるいは自分自身にどんな影響を及ぼすのかを考えるところまで踏み込むと良いでしょう。

 弊社の勉強会でも使っているFutures Wheelは、そのような検討をやりやすくするためのツールなのです。

コラム執筆者:新井 宏征(あらい ひろゆき)

株式会社スタイリッシュ・アイデア 代表取締役

東京外国語大学大学院修後、SAPジャパン、情報通信総合研究所(NTTグループ)を経て、現在はシナリオプランニングやプロダクトマネジメントの考え方を応用し、事業と組織の両面からクライアントの変革を支援するコンサルティング活動に従事。

Saïd Business School Oxford Scenarios Programmeにおいて、世界におけるシナリオプランニング指導の第一人者であるRafael Ramirezや、Shell Internationalでシナリオプランニングを推進してきたKees van der HeijdenやCho-Oon Khongらにシナリオプランニングの指導を受ける。

その内容を理論的な基礎としながら、2013年の創業以来、日本の組織文化や慣習にあわせた実践的なシナリオプランニング活用支援を行っている。

資格として、PMP(Project Management Professional)、英検1級、TOEIC 990点、SAP関連資格などを保有している。

主な著書に『実践 シナリオ・プランニング』、訳書に『プロダクトマネジャーの教科書』、『成功するイノベーションは何が違うのか?』、『90日変革モデル』、『世界のエグゼクティブが学ぶ 誰もがリーダーになれる特別授業』(すべて翔泳社)などがある。