ChatGPTにシナリオプランニングはできるのか?【Stylish Ideaメールマガジン vol.303】

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最近何かと話題のChatGPT。ChatGPTに限らず、LLM(大規模言語モデル)を使ったサービスが次々と出てきています。

 ChatGPTの活用方法を紹介する情報も、個人での活用からビジネスでの活用まで、さまざまなものがオンライン上でたくさん飛び交っていますね。私もChatGPTをはじめ、いくつかのサービスを試しに使っていますが、本当にいろいろなことができると感心します。

 いろいろと試しながら浮かんだのは、「ChatGPTでシナリオがつくれちゃうんじゃないか?」ということ。

●ChatGPTに直接聞いてみた

実際にChatGPTに聞いてみました。少し長くなりますが、最初のやり取りを引用してみます。

 私:ChatGPTは未来予測をすることはできますか?例えば、2040年の日本社会はどうなるか予測することはできますか?

ChatGPT:はい、私は未来予測を行うことができますが、注意すべき点がいくつかあります。まず第一に、未来予測は常に不確実性が高く、正確性を保証することはできません。 また、予測は様々な要因や変数によって左右されるため、異なるシナリオが存在することがあります。

それにもかかわらず、私はある程度の予測を行うことができます。2040年の日本社会に関して言えば、いくつかの可能性があるでしょう。例えば、高齢化が進み、少子化も続くことが予想され、社会保障制度や労働市場、医療などの分野での改革が必要になる可能性があります。また、技術革新が進み、AIやロボットなどがより広く普及することで、労働市場や生活様式の変化も予想されます。これらの変化によって、教育やキャリア形成の在り方、住宅や交通システム、地方創生などにも影響が出る可能性があります。

ただし、これらの予測が正確であることを保証することはできません。私が提供できるのは、現在のトレンドやデータを基に、ある程度の可能性があると考えられる未来のシナリオを提供することです。

プロンプトを工夫して、面白おかしい回答にすることもできるでしょうが、そこまでしなくても興味深い回答を返してくれました。ちなみに、この回答はGPT-3.5で試したものですが、GPT-4で試しても概ね同じような回答が返ってきています。

プロンプトに「シナリオプランニング」という言葉は含めず、あえて「未来予測」という言葉を使ってみましたが、回答には「不確実性が高く」とか「異なるシナリオが存在する」というような言葉が含まれていて、こちらの空気を読んで回答してくれているのかと思ってしまうほどでした。

●AIを使ってできること

冗談はともかく、ここで終わりにするのではなく、対話式に質問を繰り返していけば、それぞれの項目についてより詳しい内容は出てくるでしょう。

上記の文章はこのコラム用に試したものですが、実際にいろいろ試してみると、シナリオプランニングの7ステップの4番目で作成する「ベースシナリオ」くらいであれば、人がゼロからいろいろ調べなくてもある程度のものが出来上がりそうです。

ChatGPTは情報のソースがわからないから不安だという人は、Perplexityなどを使えば、そういう不安も払拭されるかもしれません。

●AIがつくったシナリオをインプットとして活用する

では、もう人間がシナリオプランニングをやる必要がないかというと、今の時点ではそうも言い切れないでしょう。

なぜ、そう言えるかというと、このメールマガジンを長らく読んでくださっている方、あるいは拙著『実践 シナリオ・プランニング』は一度は目にした可能性がある「シナリオはアウトプットではなくインプット」という話です。

今後のAIの進化、そしてAIの活用方法の工夫が進めば、ベースシナリオに限らず、自分たちにある程度関係のあるシナリオをつくることができるようにはなるでしょう。

それが、どの程度先のことかはわかりませんが、最近の技術進化のスピードを見ていると、それはそう先ではないだろうと想像できます。

しかし、それは、あくまでもアウトプットです。

そして「シナリオはアウトプットではなくインプット」という言葉のとおり、AIがつくったものをインプットとして、自分たちにとっての示唆を読み取り、対応策を考え、行動していくのは、人間である私たち側です。

特に実際に行動をしていく部分、つまり対応策を行動に移し、組織やチームを変革していくような部分は、私たち人間が動いていく以外には方法がありません(ただし、これも「少なくとも今の常識の範囲では」かもしれませんが…。)

さらに、その行動につながる示唆を検討する部分や対応策を考える部分についても、Aiに考えてもらおうと思えば考えてもらえる部分ですが、だからといって

「AIがこれをやれって言っているからよろしく」

という言葉と共にタスクが割り振られてきたらどうでしょうか?それもひとつ合理的なやり方かもしれません。

●AIが検討したシナリオから対話につなげる

しかし、「シナリオはアウトプットではなくインプット」ということを念頭に置いてみると、AIがつくったシナリオも違ったとらえ方ができるでしょう。

たしかに自分たちがつくったものではないにしても、そのシナリオをインプットとしてチームや組織のメンバーで対話をしてみるのはどうでしょう?

AIがさまざまなファクトを元にしてつくったシナリオに、自分たちのこれまでの取り組み、現在置かれている状況も含めて考え、普段の業務に関するやり取りだけでは話題に出すことができなかったようなテーマを持ち込んだ対話の場をつくってみる。

そこから得られた示唆や対応策は、AIから一方的に言われたものと比べて、自分たちの納得度も大きく変わっているはずです。

ここで書いたことも、今のAIの可能性を元にしたものでしかありません。ここで想定していたことがお花畑のようなものだったと思うような世界が来る可能性もあるかもしれません。

シナリオプランニングに取り組む人としては、世の中の動きを定点観測しながら、このような想定が大きく変わっていく可能性につながる兆候に目を光らせつつ、「シナリオはアウトプットではなくインプット」という基本に立ち返って、AI時代のシナリオプランニングの活用法を試行錯誤しながら考えてみるのが良いかもしれません。