シナリオプランニングのステップで"悩んではいけない"ところ【Stylish Ideaメールマガジン vol.284】
シナリオプランニングの進め方はさまざまな考え方がありますが、私たちは7つのステップで進めています。
この7つのステップのうち「悩んではいけない」ステップがあるのですが、それはどこだと思いますか?
そう問いかけると「何かを考えるのに悩むことは誰でもあるはずだから、悩んではいけないステップなんてあるはずないだろう」と思われるかもしれません。
「悩む」と「考える」の違い
実は、ここで言っている「悩む」というのは、『イシューからはじめよ』という本の中で出てくる「悩む」と「考える」は違うという話を元にしています。同書の中では、「悩む」と「考える」を次のように区別しています。
- 「悩む」:「答えが出ない」という前提のもとに、「考えるフリ」をするこ
- 「考える」:「答えが出る」という前提のもとに、建設的に考えを組み立てること
この違いは拙著『実践 シナリオ・プランニング』でも紹介したほど、私自身とても大切だと考えているものです(182ページで紹介しています)。
この定義を元にもう少し噛み砕いて言うと、シナリオプランニングに取り組んでいるときに「悩んでいる」状態とは、明確な根拠がないまま検討を行っていて、判断に迷っている状態のことを想定しています。
グループワークで取り組んでいる場合、「これはどうしようか?」などと言いながら、それぞれが思い思いの考えを言葉にしているものの、明確な判断基準がなく、方向性が決まらないまま時間が過ぎていっている状況です。
私の『実践 シナリオ・プランニング』の最初の方、たとえば60ページに書いてあるものを参考にすると、シナリオプランニングとは「将来における不確実な可能性を考える」ことだと位置づけられています。
「悩んではいけない」ステップとは?
そのような状態を思い浮かべていただき、そのような状態にはなってはいけない、つまり「悩んではいけない」ステップはどれなのか、改めて考えてみてください。
もちろん、どのステップも明確な根拠なくなんとなく「考えるフリ」をしてはいけないのですが、一番「悩んではいけない」のはステップ3「重要な環境要因の抽出」です。
このステップでは「不確実性マトリクス」というシナリオプランニングに特徴的なマトリクスを活用します(下図参照)。
不確実性マトリクスで迷った時にまず取り組むべきこと
不確実性マトリクスで迷った時に次に進めるリサーチのコツ
大切なのは「悩む」のではなく「考える」こと
コラム執筆者:新井 宏征(あらい ひろゆき)

株式会社スタイリッシュ・アイデア 代表取締役
東京外国語大学大学院修後、SAPジャパン、情報通信総合研究所(NTTグループ)を経て、現在はシナリオプランニングやプロダクトマネジメントの考え方を応用し、事業と組織の両面からクライアントの変革を支援するコンサルティング活動に従事。
Saïd Business School Oxford Scenarios Programmeにおいて、世界におけるシナリオプランニング指導の第一人者であるRafael Ramirezや、Shell Internationalでシナリオプランニングを推進してきたKees van der HeijdenやCho-Oon Khongらにシナリオプランニングの指導を受ける。
その内容を理論的な基礎としながら、2013年の創業以来、日本の組織文化や慣習にあわせた実践的なシナリオプランニング活用支援を行っている。
資格として、PMP(Project Management Professional)、英検1級、TOEIC 990点、SAP関連資格などを保有している。
主な著書に『実践 シナリオ・プランニング』、訳書に『プロダクトマネジャーの教科書』、『成功するイノベーションは何が違うのか?』、『90日変革モデル』、『世界のエグゼクティブが学ぶ 誰もがリーダーになれる特別授業』(すべて翔泳社)などがある。