シナリオプランニングと問題解決【Stylish Ideaメールマガジン vol.280】

シナリオプランニング」と「問題解決」と聞くと、まったく関係ないもの、あるいは相容れないものと感じる方が多いようです。

しかし、シナリオプランニングに取り組む人、特にシナリオプランニングのプロジェクトの設計やワークショップの運営にかかわる方にとっては、問題解決の能力は欠かせません。

お問い合わせをいただく際、あるいは講演などの場で質問をいただく際に、

「シナリオプランニングに取り組んだんだけど、うまくいかなかった」

という話をうかがうことがあります。

そういう中でも多いのが、新しいアイデアを出すためにシナリオプランニングに取り組んだという状況です。

このとき「うまくいかなかった」という話は、大きく次のA, Bのどちらかになることが多いです。

・A:シナリオプランニングに取り組んだけれど、まったく盛り上がらず、アイデアも良いものが出なかった

・B:シナリオプランニングに取り組んで、その場では盛り上がり、アイデアも出たけど、ワークショップが終わったら元に戻ってしまった

一見、正反対の状況のように見えます。

そのため、シナリオプランニングの観点だけでこの状況をとらえてしまって対応策を考えると、次のようなことになってしまいます。

・A:「次回は盛り上がるようなワークショップの進め方を考えてみましょう」

・B:「次回はワークショップ後の実践につながるよう最後に全員が行動を宣言する時間を取りましょう」

どちらももっともらしく見える対応策ですが、おそらく、どちらとも思ったほどの効果をあげない可能性が高いでしょう。

なぜなら、どちらの対応策も表面的な現象への対応になっているだけだからです。

ここで必要となるのが、問題解決の態度です。

解決していくためのアプローチはひとつではありませんが、わかりやすいのは、まず「どうなるのが理想だと考えているのか?」を確認するところから始めるところでしょう。

そうすると、例えば、ある場合は、

「とにかく普段の業務とかは脇に置いて、極端な話、自社とか世の中にとっての実現可能性とかも脇に置いておいて、ぶっ飛んだアイデアを出すような場にしたい。そうやって「脳をほぐす」ような機会をとおして、普段の業務などに取り組むときにも枠にとらわれずに考えるようになってもらいたい」

というのを理想だと考えられていたりします。

別の場合では、

「普段は新規事業といっても、既存の事業を守る発想しか出てこない。それだと延命にはなるが、長期的には先細りが確実だ。ただ、世の中を見渡せば、既存の自社の組織資源をつかって、もっといろんなことに取り組めるはずだ。これまでの弊社の事業とかスタイルにとらわれない次の柱になるような案を検討し、実現に向けて動き出せるようなものを考えてもらいたい」

というのを理想だと考えられていることもあります。

例えば、これだけの情報でも、前者であればシナリオプランニングの設定として、時間軸を思い切り先に設定してみることで、ぶっ飛んだアイデアを出すようにできるかもしれません。

しかし、求められているアイデアの質によっては、シナリオプランニングではなく、別のアイデア発想法などを試すことを薦める方が良い場合もあるでしょう。

一方、後者であれば、過去のシナリオプランニングの取り組みの状況を詳しく聞いて、例えば、どんな軸が出ていたのかなどを確認するのは必要でしょう。

その上で、どうしても自分たちの枠から出ることが難しい参加者が多そうだと判断したら、その会社の状況などを踏まえて、こちらでシナリオを作成し、それを使って未来創造ダイアローグに取り組むことを提案するのも一案です。

もちろん、実際には、ここに書いた以上にヒアリングをして深掘りする必要がありますし、その企業や事業などの背景も確認が必要です。

シナリオプランニングの取り組みを始める際、もちろん、最低限のシナリオプランニングの知識はあった方が良いでしょう。

しかし、シナリオプランニングの知識だけでプロジェクトやワークショップが設計できるかというと、必ずしもそうではありません。

よくお伝えしているように、シナリオプランニングで作成するシナリオはアウトプットではなく、インプットです。

そうだとすれば、「シナリオをインプットとして使おうと思っているのは、どういう場面なのか」を理解して、その場面にもっとも合うような設計を考える必要があります。

上に書いたように、場合によってはシナリオプランニング以外の手法の方が良いと判断することも必要になるかもしれません。

このようなことをできるためには、シナリオプランニングだけではなく、問題解決の態度と能力が必要になってくるのです。