シナリオを学ぶのはグループが良いのか、個人が良いのか【Stylish Ideaメールマガジン vol.249】

長年、弊社のシナリオプランニングの研修を採用していただいているお客さまがいます。

これまでは対面で、グループワーク中心に実施してきましたが、この状況ですので、オンラインに切り換えての実施となりました。

その際、演習をどうするのかという話になり、これまでのグループワークをやめ、オンラインで個人ワークで進めることになりました。

実際に取り組んでみると、とても良い結果となりました。

慣れない手法を学ぶ際、グループで取り組むと、お互いに不足している情報を補い合ったり、考え方の違いを共有することで、大変な状況でもなんとか乗り切ることができます

そういうメリットがある半面、グループで何かをつくるとなると、どうしても個人として妥協しなくてはいけない場面も出てきます。

例えば、本当はもう少し医療のことを突っ込んで考えたいけど、それだと他の人には専門的過ぎるので、もう少し一般的な内容にする、というような妥協の仕方です。

また、グループで取り組む場合、よく理解している人がワークを取り仕切ることでアウトプットはできあがったものの、他の人にとっては理解を深める機会が少なくなったということも、しばしば起こります。

一方、個人でシナリオをつくる形式となると、妥協をする必要もなく、理解を深める機会が誰かにうばわれてしまうこともありません。

その分、行き詰まってしまったときには、そこから抜け出すのが簡単ではないというデメリットもあります。

弊社の公開セミナーでは、上で書いた内容にそうと妥協をする必要もなく、理解を深める機会を個人に持ってもらうために、基本的には個人ワーク中心で講座を進めていきます。

ただし、グループで取り組むことで得られるお互いに不足している情報を補い合ったり、考え方の違いを共有する点も捨てがたいと思い、最初に実施するミニ演習はグループで進めています。

もちろん、これまでお伝えしたようなメリット・デメリットは、絶対的なものではありません。

そのため実際の研修では、学ぶ目的や参加者の状況に応じて、グループワークと個人ワークのどちらをメインにするか、状況に応じて、それらをどう組み合わせていくのかを設計し、さらに進行しながら柔軟に変えていくことが必要です。

コラム執筆者:新井 宏征(あらい ひろゆき)

株式会社スタイリッシュ・アイデア 代表取締役

東京外国語大学大学院修後、SAPジャパン、情報通信総合研究所(NTTグループ)を経て、現在はシナリオプランニングやプロダクトマネジメントの考え方を応用し、事業と組織の両面からクライアントの変革を支援するコンサルティング活動に従事。

Saïd Business School Oxford Scenarios Programmeにおいて、世界におけるシナリオプランニング指導の第一人者であるRafael Ramirezや、Shell Internationalでシナリオプランニングを推進してきたKees van der HeijdenやCho-Oon Khongらにシナリオプランニングの指導を受ける。

その内容を理論的な基礎としながら、2013年の創業以来、日本の組織文化や慣習にあわせた実践的なシナリオプランニング活用支援を行っている。

資格として、PMP(Project Management Professional)、英検1級、TOEIC 990点、SAP関連資格などを保有している。

主な著書に『実践 シナリオ・プランニング』、訳書に『プロダクトマネジャーの教科書』、『成功するイノベーションは何が違うのか?』、『90日変革モデル』、『世界のエグゼクティブが学ぶ 誰もがリーダーになれる特別授業』(すべて翔泳社)などがある。