想定外の可能性を考えるための外部環境要因リサーチの肝【Stylish Ideaメールマガジン vol.248】
シナリオを作成する際、必ず必要になるのがテーマに関連する外部環境要因のリサーチです。
ここでどれだけ幅広い要因を集められるかが、そのあとのシナリオ作成にも影響してきます。
そういう位置づけだということもあるからか、ワークショップの参加者の方から「いくつの要因を調べておけば良いのか?」という質問をいただくことが少なくありません。
この質問、答えるのはなかなか難しいのです。
なぜなら、単に要因の数が多ければそれで良いというわけではないからです。数と同時に「質」も必要だからです。
では「質」が良い外部環境要因とは何かというと、複数シナリオを考える際、これまで自分たちが想定していなかった可能性を考えることにつながるような要因のこと。
しかし、リサーチをしている段階で、その外部環境要因が想定していなかった可能性を考えられるかどうかはなかなかわかりません。
そこで、もう少しわかりやすい指針として、
- 外部環境要因リサーチの段階では、「関係あるかどうか」は気にせずに盛り込むこと
ということを念頭に置いておくと良いでしょう。
シナリオをつくり出す前のリサーチというのは、どうしても普段の仕事と大差ありません。
そのため、ついつい「これは関係なさそうだ」と、普段の判断基準が働きやすくなっています。
しかし、ある要因が本当に関係あるかどうかは、外部環境要因リサーチの次のステップである「重要な環境要因の抽出」のステップで、不確実性マトリクスというツールを使い検討します。
そのため、最初にリサーチを行う段階ではあまり「狙い過ぎず」に幅広い要因を調べるのが良いでしょう。
弊社では外部環境要因リサーチの枠組みとして、
- S:社会
- T:技術
- E:経済
- E:環境
- P:政治
というSTEEPというものを使っています。
この枠組みを踏まえて、「自分たちは普段はこの分野はあまり見ていない」という分野を集中的に調べていくのがお薦めです。
そういう形で意識的に幅広くリサーチをした上で、ステップを先に進め、最初のシナリオを作成します。
完成した「シナリオ 第1版」を見直して、新たにどういう点をリサーチすればより良いものになるのか、言い換えれば、これまで想定していなかったことを盛り込めるかを検討し、再度リサーチに取り組みます。
このようにリサーチの良し悪しを、リサーチの段階だけで判断せず、プロセス全体を進め、繰り返す過程をとおして判断していくことが、結果として近道になります。
まとめると、
- 最初にリサーチをするときは幅広くとらえ、
- シナリオ作成のプロセスを繰り返しながら、より関連性のある要因を盛り込んでいく
という方針で外部環境要因リサーチを進めると、「いくつの要因を調べておけば良いのか?」という悩みにとらわれずにシナリオ作成に取り組むことができるようになるでしょう。
コラム執筆者:新井 宏征(あらい ひろゆき)

株式会社スタイリッシュ・アイデア 代表取締役
東京外国語大学大学院修後、SAPジャパン、情報通信総合研究所(NTTグループ)を経て、現在はシナリオプランニングやプロダクトマネジメントの考え方を応用し、事業と組織の両面からクライアントの変革を支援するコンサルティング活動に従事。
Saïd Business School Oxford Scenarios Programmeにおいて、世界におけるシナリオプランニング指導の第一人者であるRafael Ramirezや、Shell Internationalでシナリオプランニングを推進してきたKees van der HeijdenやCho-Oon Khongらにシナリオプランニングの指導を受ける。
その内容を理論的な基礎としながら、2013年の創業以来、日本の組織文化や慣習にあわせた実践的なシナリオプランニング活用支援を行っている。
資格として、PMP(Project Management Professional)、英検1級、TOEIC 990点、SAP関連資格などを保有している。
主な著書に『実践 シナリオ・プランニング』、訳書に『プロダクトマネジャーの教科書』、『成功するイノベーションは何が違うのか?』、『90日変革モデル』、『世界のエグゼクティブが学ぶ 誰もがリーダーになれる特別授業』(すべて翔泳社)などがある。
