シナリオプランニングとデザイン思考の接点【Stylish Ideaメールマガジン vol.245】
前回のメールマガジンでは、シナリオとアイデアソンの組み合わせについて紹介しました。
・シナリオプランニングを使った未来起点アイデアソン【Stylish Ideaメールマガジン vol.244】
ただ、過去の経験からアイデアソンについて、
「なんとなく楽しい感じにはなるんだけど、本当に顧客の価値に直結したアイデアはなかなか出ないまま終わってしまう印象がある」
という意見をお持ちの方もいらっしゃいます。
たしかに私自身も過去に参加したアイデアソンで同じような印象を持ったことがありました。
その場では、アイデアの実現可能性や事業性よりも、「ウケる」アイデアが評価されていたからです。
もちろん、アイデア発想の練習としてはそういう場も悪くはないかもしれないですが、いざ組織でやるとなると、それでは厳しいもの。
そうではなく、アイデアソンの質を高めるためには、対象とする顧客像を明確化しておくことが重要です。
このときに使えるのがいわゆる「デザイン思考」の考え方です。
例えば、これまで実施したプロジェクトの中では、シナリオプランニングに取り組む前に、デザイン思考の考え方も取り入れながら、まずは自社の想定顧客のペルソナを明確にするところから始めたことがありました。
その上で、
「この顧客の困り事やニーズなどは、シナリオで描いたそれぞれの未来においてどのように変わる可能性があるだろうか?」
と問い、環境変化を受けた顧客の変化の可能性を検討していきました。
よくこのメールマガジンなどでも、シナリオはインプットであり、自社等のことを新たな視点から考えるきっかけとするものだとお伝えしています。
そのように考える際、アイデアなどの質を左右するのは、シナリオだけではありません。自社を取り巻く現状の認識の質も影響します。
現状の中でも、特に顧客についての認識の質を高めるためには、デザイン思考などの考え方をシナリオプランニングと結びつけることが効果的です。
シナリオプランニングとデザイン思考をまったく別の手法として考えるのではなく、どういう観点で、それらを結びつけられるかと考えてみると、両者の接点が見えてくるはずです。
コラム執筆者:新井 宏征(あらい ひろゆき)

株式会社スタイリッシュ・アイデア 代表取締役
東京外国語大学大学院修後、SAPジャパン、情報通信総合研究所(NTTグループ)を経て、現在はシナリオプランニングやプロダクトマネジメントの考え方を応用し、事業と組織の両面からクライアントの変革を支援するコンサルティング活動に従事。
Saïd Business School Oxford Scenarios Programmeにおいて、世界におけるシナリオプランニング指導の第一人者であるRafael Ramirezや、Shell Internationalでシナリオプランニングを推進してきたKees van der HeijdenやCho-Oon Khongらにシナリオプランニングの指導を受ける。
その内容を理論的な基礎としながら、2013年の創業以来、日本の組織文化や慣習にあわせた実践的なシナリオプランニング活用支援を行っている。
資格として、PMP(Project Management Professional)、英検1級、TOEIC 990点、SAP関連資格などを保有している。
主な著書に『実践 シナリオ・プランニング』、訳書に『プロダクトマネジャーの教科書』、『成功するイノベーションは何が違うのか?』、『90日変革モデル』、『世界のエグゼクティブが学ぶ 誰もがリーダーになれる特別授業』(すべて翔泳社)などがある。