成果を明確にすることが学習につながる【Stylish Ideaメールマガジン vol.228】

前回のメールマガジンでは、「成果」と「成果物」の違いをご紹介しました。

私たちが日々仕事をしている中では、「成果」よりも「成果物」に意識を向けている時間の方が多いかもしれません。現場で商品やサービスを開発する立場の人や、セミナーやコンテンツなどの企画を担当する人は、特にそうでしょう。

しかし、だからといって「成果」を考えなくても良いというわけではありません。なぜなら、担当している「成果物」の成否を判断し、その判断を元に学習につなげていくためには「成果」の理解が欠かせないからです。

例えば、自社で法人向けの公開セミナーを企画して、実施する場合を考えてみましょう。

知恵を絞って企画を考え、プロモーションをし、セミナー当日、20社の企業が参加してくれました。さて、「成果物」であるこのセミナーは、成功したと言えるでしょうか?20社という参加数は十分だと言えるでしょうか?

それは、このセミナーの「成果」の設定によって変わってきます。

仮にこのセミナーの「成果」が、「過去に自社との取引がなかった企業との接点を増やす」というものであれば、20社という数字ではなく、参加企業のうち、過去の取引がなかった企業が何社いたのかを調べる必要があるでしょう。

さらに、その結果を踏まえて、成果を達成できたのであれば何か良かったのか、達成できなかったのであれば何を改善すべきかを考えることも忘れてはいけませんこれが組織にとっての学習につながります

次に同じようなセミナーをやる場合はどうするか、あるいはセミナーが効果的でなかった場合、次は他にどんな手段を使っていくのが良いかを考えていくことになるでしょう。そのように考えていくためのきっかけとなるが「成果」になのです。

このように「成果」を考えることは、取り組んでいる「成果物」の成否を判断し、継続的な仮説検証を進める上で欠かせません

「成果物」の結果を適切にマネジメントし、次につながる学習につなげていくためにも、「成果」とあわせて考えることを徹底しましょう。

コラム執筆者:新井 宏征(あらい ひろゆき)

株式会社スタイリッシュ・アイデア 代表取締役

東京外国語大学大学院修後、SAPジャパン、情報通信総合研究所(NTTグループ)を経て、現在はシナリオプランニングやプロダクトマネジメントの考え方を応用し、事業と組織の両面からクライアントの変革を支援するコンサルティング活動に従事。

Saïd Business School Oxford Scenarios Programmeにおいて、世界におけるシナリオプランニング指導の第一人者であるRafael Ramirezや、Shell Internationalでシナリオプランニングを推進してきたKees van der HeijdenやCho-Oon Khongらにシナリオプランニングの指導を受ける。

その内容を理論的な基礎としながら、2013年の創業以来、日本の組織文化や慣習にあわせた実践的なシナリオプランニング活用支援を行っている。

資格として、PMP(Project Management Professional)、英検1級、TOEIC 990点、SAP関連資格などを保有している。

主な著書に『実践 シナリオ・プランニング』、訳書に『プロダクトマネジャーの教科書』、『成功するイノベーションは何が違うのか?』、『90日変革モデル』、『世界のエグゼクティブが学ぶ 誰もがリーダーになれる特別授業』(すべて翔泳社)などがある。