"面白い"シナリオは必要なのか?【Stylish Ideaメールマガジン vol.222】
プロジェクトなどでシナリオを作成するために、いろいろな軸の組み合わせを試しているとき、
「この組み合わせは "面白い" / "面白くない" なぁ」
という声が参加者から出てくることがあります。
こういう声が出てきたとき、参加者として、あるいはファシリテーターとしては、そこで出てきている「面白い」という言葉の意味を正確に理解するための確認をする必要があります。
そういう場面で出てくる「面白い」という言葉は、
- 斬新だ
という意味合いで使われることが多いです。
未来のことを考えるので、たしかに斬新さは大事な要素のように思えます。
しかし、だからといってSFやアニメで出てくるような世界観が描かれているシナリオが良いというわけではありません。
私がOxfordでシナリオプランニングを学んだ際に言われたことが、
「クライアントが "絶対に起きない" と考えていることに目を向けろ」
というものでした。
シナリオプランニングは、長期的な視点で自社を取り巻く環境要因の不確実な変化の可能性を考え、それに対する備えを検討する手法です。
そのように考えると、シナリオプランニングに取り組む際に考えるべき
「面白い」
は、奇抜であるとか、斬新であるというような世界観自体の面白さではありません。
そうではなく、これまでに考えもしなかった、しかし、言われてみれば考えなくてはいけない要素が含まれている世界観こそがシナリオプランニングで考えるべき面白さです。
そのように考えると、弊社の公開セミナーでもよく強調しているように、シナリオプランニングをやる前に現状分析を行うことの重要性も理解できるのではないでしょうか。
コラム執筆者:新井 宏征(あらい ひろゆき)

株式会社スタイリッシュ・アイデア 代表取締役
東京外国語大学大学院修後、SAPジャパン、情報通信総合研究所(NTTグループ)を経て、現在はシナリオプランニングやプロダクトマネジメントの考え方を応用し、事業と組織の両面からクライアントの変革を支援するコンサルティング活動に従事。
Saïd Business School Oxford Scenarios Programmeにおいて、世界におけるシナリオプランニング指導の第一人者であるRafael Ramirezや、Shell Internationalでシナリオプランニングを推進してきたKees van der HeijdenやCho-Oon Khongらにシナリオプランニングの指導を受ける。
その内容を理論的な基礎としながら、2013年の創業以来、日本の組織文化や慣習にあわせた実践的なシナリオプランニング活用支援を行っている。
資格として、PMP(Project Management Professional)、英検1級、TOEIC 990点、SAP関連資格などを保有している。
主な著書に『実践 シナリオ・プランニング』、訳書に『プロダクトマネジャーの教科書』、『成功するイノベーションは何が違うのか?』、『90日変革モデル』、『世界のエグゼクティブが学ぶ 誰もがリーダーになれる特別授業』(すべて翔泳社)などがある。