ツールとしてのシナリオ、マインドとしてのシナリオ【Stylish Ideaメールマガジン vol.221】

シナリオプランニングについてはさまざまな定義がありますが、弊社では

「不確実性に対処するための手法」

と定義しています。

この定義に込めている意味合いは2つあります。
それは事業面での対処と組織面での対処です。

シナリオプランニングでは、設定したテーマに対応する不確実な未来の可能性を複数つくります。

作成したシナリオはアウトプットではなくインプットだとお伝えしているとおり、作成した不確実な未来の可能性を元にして、自社がどのような備えをするのかを検討します。

具体的には、作成したシナリオを元にして各種戦略や事業計画、新規事業案などを作成していきます。

これが「事業面での対処」と呼んでいるものです。

しかし、これだけでは十分ではありません。

シナリオを元にして作成した戦略や計画、事業案を実行に移さなければいけません。

その際に意識しなければいけないのが不確実性を元にした戦略などの実行です。

事前に検討したシナリオを元にして、シナリオに盛り込んだ不確実性を踏まえた戦略などの実行をしていかなければいけません

立案した戦略や計画を元にしつつ、継続して環境の変化を追いながら、変化に応じて柔軟に実行を進めていきます。

このような戦略実行を可能にするためには、組織としての動き方を、従来のものとは大きく変える必要が出てくるかもしれません。

このように、環境変化に応じた戦略実行や意思決定をできるようになるために、組織や人材を見直していくことが「組織面での対処」と呼んでいるものです。

事業面での対処を念頭において、シナリオをつくり、それを元にした対応策を検討することは、たしかに大切です。

ただし、それではシナリオプランニングを一面からしか見ていないことになります。
「ツール」としてのシナリオプランニングです。

事業面での対処と並行して、不確実な世界に対処し、順応し、それを機会に変えていく組織面での対処も忘れてはいけません

このような取り組みは「マインド」としてのシナリオプランニングと言えます。

シナリオプランニングの事業面での活用、言い換えれば「ツール」としての活用はよく知られています。

しかし、「ツール」としてのシナリオを本当の意味で活かしていくためには組織面での対処、「マインド」としての活用もあわせて考えることを忘れてはいけません

コラム執筆者:新井 宏征(あらい ひろゆき)

株式会社スタイリッシュ・アイデア 代表取締役

東京外国語大学大学院修後、SAPジャパン、情報通信総合研究所(NTTグループ)を経て、現在はシナリオプランニングやプロダクトマネジメントの考え方を応用し、事業と組織の両面からクライアントの変革を支援するコンサルティング活動に従事。

Saïd Business School Oxford Scenarios Programmeにおいて、世界におけるシナリオプランニング指導の第一人者であるRafael Ramirezや、Shell Internationalでシナリオプランニングを推進してきたKees van der HeijdenやCho-Oon Khongらにシナリオプランニングの指導を受ける。

その内容を理論的な基礎としながら、2013年の創業以来、日本の組織文化や慣習にあわせた実践的なシナリオプランニング活用支援を行っている。

資格として、PMP(Project Management Professional)、英検1級、TOEIC 990点、SAP関連資格などを保有している。

主な著書に『実践 シナリオ・プランニング』、訳書に『プロダクトマネジャーの教科書』、『成功するイノベーションは何が違うのか?』、『90日変革モデル』、『世界のエグゼクティブが学ぶ 誰もがリーダーになれる特別授業』(すべて翔泳社)などがある。