シナリオプランニングで視野を広げるとは?【Stylish Ideaメールマガジン vol.217】
シナリオをつくるワークショップや研修では、参加者の人がつくったシナリオのブラッシュアップのためのアドバイスをすることが多々あります。
そのアドバイスは、もちろん、それぞれのシナリオの出来で変わってきますが、たくさんのシナリオを見ていると、いくつかの共通的な特徴があることがわかってきます。
そのうちのひとつが
「もっと視野を広げて考えてください」
というもの。
この「視野を広げる」というアドバイスは、シナリオプランニングに限らず、いろいろなところで言ったり言われたりしたことがあるのではないでしょうか。
しかし、このアドバイス、表面上はわかった気になるものの、実際にはどのように改善していったら良いのか、なかなか見当がつかないアドバイスでもあります。
そういう時は、言葉の意味に戻って考えます。
三省堂国語辞典によると、「視野」とは「考え方や見方のおよぶ範囲」と書かれています。
そうすると「視野を広げて」と言われている時は、「考える範囲や見る範囲を広げてみて」と言われていることになります。
(実際、そこまで考えて言っていない人も少なくないのが実情ではありますが…)
では、シナリオ作成において「視野を広げる」とは何をすれば良いのでしょうか?
ひとつには、「時間」という観点から考える範囲や見る範囲を広げていきます。
しかし、これは、そもそもシナリオテーマで「10年後」というように時間を設定しているので、気づきやすい観点ではあります。
時間ほど気づきやすくはない、別のものに「立場」という観点があります。
通常、私たちは世の中の変化などを考える際、知らず知らずのうちに、「自分の立場」だけで見たり、考えたりしてしまっています。
しかし、実際には社会はさまざまな「立場」の人から成り立っています。
- 自社製品やサービスを使う消費者
- 調子が悪いときにかかる医療関係の人
- 地域にかかわる行政などの人
などなど、挙げていけばキリがありません。
そこで挙げてみた、さまざまな人の「立場」になって未来のことを思い描いてみようとすれば、自然と考える範囲や見る範囲は広がるはずです。
自分や自社、あるいはその近辺だけを見ていても、不確実な未来の可能性は見えてはきません。
「時間」と「立場」という観点から考える範囲や見る範囲を広げる、つまり視野を広げていくことで、これまでなら想定していなかった未来の可能性に気づくことができるはずです。
コラム執筆者:新井 宏征(あらい ひろゆき)

株式会社スタイリッシュ・アイデア 代表取締役
東京外国語大学大学院修後、SAPジャパン、情報通信総合研究所(NTTグループ)を経て、現在はシナリオプランニングやプロダクトマネジメントの考え方を応用し、事業と組織の両面からクライアントの変革を支援するコンサルティング活動に従事。
Saïd Business School Oxford Scenarios Programmeにおいて、世界におけるシナリオプランニング指導の第一人者であるRafael Ramirezや、Shell Internationalでシナリオプランニングを推進してきたKees van der HeijdenやCho-Oon Khongらにシナリオプランニングの指導を受ける。
その内容を理論的な基礎としながら、2013年の創業以来、日本の組織文化や慣習にあわせた実践的なシナリオプランニング活用支援を行っている。
資格として、PMP(Project Management Professional)、英検1級、TOEIC 990点、SAP関連資格などを保有している。
主な著書に『実践 シナリオ・プランニング』、訳書に『プロダクトマネジャーの教科書』、『成功するイノベーションは何が違うのか?』、『90日変革モデル』、『世界のエグゼクティブが学ぶ 誰もがリーダーになれる特別授業』(すべて翔泳社)などがある。