どの範囲で自社を見ているのか【Stylish Ideaメールマガジン vol.196】

シナリオプランニングのワークショップでは、ファシリテーターとして、グループワークのいろいろな要素を見ています。

その中でもグループワークで出ている内容に絞り込むと、よく気にしているのは

「この人は、どういう範囲で自分たちをとらえているのだろうか?」

ということ。

わかりやすいところで説明をすると、自社の競争環境を見ている範囲がどうかはファシリテーターとして気になるところです。

話しを単純化すると、自社の競争環境をいわゆる「業界」の中だけで見ていては危険です。それはあくまでも提供者側の視点だからです。

例えば、

「マクドナルドの競合はどこですか?」

という質問を自分がマクドナルドの社員という想定でされた場合、おそらく有名なハンバーガーチェーンの名前があがるでしょう。

しかし、あなたが手軽にランチを取れるお店を探しているビジネスパーソンの立場で考えた場合、出てくる競合の名前はまったく違ったものになってくるはずです。

おそらく出てくるのは、

・近場にあるラーメン屋
・近場にある牛丼チェーン
・近場にあるコンビニエンスストア

などが出てくるかもしれませんし、もしかすると「食べない」という選択肢も出てくるかもしれません。

このように昼休みになると当たり前のように自分がしている頭の使い方も、なぜか「会議室で事業を考える」という状況に置かれると、急に凝り固まってしまいます。

ワークショップ中にこのような場面に出くわした場合は、一度、その手を止めてもらい、自分たちの事業を取り巻くステークホルダーを出してもらいます。

(そもそも、こういう状況にならないように、最初からステークホルダーを考えるための時間を取ることももちろんあります)

前回のメールマガジンで紹介した時間と空間の話しで言えば、

・マネジメントにおける「空間」と「時間」【Stylish Ideaメールマガジン vol.195】
https://www.stylishidea.co.jp/2018/12/06/newsletter-0195/

さまざまなステークホルダーの立場に立って自社の状況を見るというのは、いわば自分が立っている「空間」を変えてみることと言っても良いかもしれません。

このようにシナリオプランニングを実践する際は、単に時間を先に延ばして考えるだけではなく、考える範囲を切り換えるためのあらゆる工夫をしていくことで、自分たちの見ている世界を広げていく機会をつくっていくのです。

コラム執筆者:新井 宏征(あらい ひろゆき)

株式会社スタイリッシュ・アイデア 代表取締役

東京外国語大学大学院修後、SAPジャパン、情報通信総合研究所(NTTグループ)を経て、現在はシナリオプランニングやプロダクトマネジメントの考え方を応用し、事業と組織の両面からクライアントの変革を支援するコンサルティング活動に従事。

Saïd Business School Oxford Scenarios Programmeにおいて、世界におけるシナリオプランニング指導の第一人者であるRafael Ramirezや、Shell Internationalでシナリオプランニングを推進してきたKees van der HeijdenやCho-Oon Khongらにシナリオプランニングの指導を受ける。

その内容を理論的な基礎としながら、2013年の創業以来、日本の組織文化や慣習にあわせた実践的なシナリオプランニング活用支援を行っている。

資格として、PMP(Project Management Professional)、英検1級、TOEIC 990点、SAP関連資格などを保有している。

主な著書に『実践 シナリオ・プランニング』、訳書に『プロダクトマネジャーの教科書』、『成功するイノベーションは何が違うのか?』、『90日変革モデル』、『世界のエグゼクティブが学ぶ 誰もがリーダーになれる特別授業』(すべて翔泳社)などがある。