マネジメントにおける「空間」と「時間」【Stylish Ideaメールマガジン vol.195】
「マネジメント」という言葉は、言葉だけでも日本人にとってはなかなか捉えにくいものですが、いざ実践しようとなると更に捉えどころがない。
そんな風に感じている人も多いはずです。
そんな中、高木晴夫氏の『プロフェッショナルマネジャーの仕事はたった1つ』では、マネジメントの仕事をシンプルに整理しています。
マネジャーの本質的な仕事とは、(中略)部下たちの疑問や悩みを解決する「適切な情報を配る」ことなのです。
詳しくは本書を読んでいただければと思いますが、部下にとって必要な情報を提供することが彼らが主体的に動くために必要なのだと説きます。
その中でも、特に次の4つを伝えることが、主体性を引き出すために重要だとしています。
(1) どんな状況で、その仕事がどんな意味を持つのか
(2) なぜその仕事を担当するのか
(3) その仕事はどう評価されるのか
(4) 上司は何を考えているのか
この4つは組織で仕事をする人であれば、誰もが知りたいと思うような内容であるはずです。
このうち特に(1)の情報は、伝えられた側、つまり仕事を振られた側が、全体の中での自分の仕事の位置づけを理解できるという点で非常に重要です。
ここでは本書の内容からさらに一歩踏み込んで、自分の位置づけをとらえる範囲に目を向けて考えてみたいと思います。
本書で紹介されているのは、組織全体の中での自分の位置づけという範囲です。
この「組織全体の中」という範囲を言い換えると組織という「空間」の中での位置づけです。
この「空間」という範囲を一歩進めて「時間」という範囲で考えてみるとどうでしょう。
中期経営計画で示されている3年や5年、あるいはシナリオプランニングでよく使われる10年といった「時間」の中で、今取り組んでいる自分の仕事を位置づけてみます。
そうすると、今、組織という「空間」の中で取り組んでいる自分の仕事が、未来という「時間」の中で、どのような意味を持ち、それが未来にどうつながっていくのかを理解することができるのです。
今取り組んでいる仕事が、必ずしも短期的に組織の成果につながるわけではないでしょう。むしろ短期的には「何のためにやっているのかわからない」と思うものもあるはずです。
そういう時には、「空間」と「時間」という両方の観点から、位置づけを伝えてみたり、自分自身で理解しようと試みてください。
そうすることで、部下も、マネジャー自身も、主体的に目の前の仕事に取り組めるはずです。
コラム執筆者:新井 宏征(あらい ひろゆき)

株式会社スタイリッシュ・アイデア 代表取締役
東京外国語大学大学院修後、SAPジャパン、情報通信総合研究所(NTTグループ)を経て、現在はシナリオプランニングやプロダクトマネジメントの考え方を応用し、事業と組織の両面からクライアントの変革を支援するコンサルティング活動に従事。
Saïd Business School Oxford Scenarios Programmeにおいて、世界におけるシナリオプランニング指導の第一人者であるRafael Ramirezや、Shell Internationalでシナリオプランニングを推進してきたKees van der HeijdenやCho-Oon Khongらにシナリオプランニングの指導を受ける。
その内容を理論的な基礎としながら、2013年の創業以来、日本の組織文化や慣習にあわせた実践的なシナリオプランニング活用支援を行っている。
資格として、PMP(Project Management Professional)、英検1級、TOEIC 990点、SAP関連資格などを保有している。
主な著書に『実践 シナリオ・プランニング』、訳書に『プロダクトマネジャーの教科書』、『成功するイノベーションは何が違うのか?』、『90日変革モデル』、『世界のエグゼクティブが学ぶ 誰もがリーダーになれる特別授業』(すべて翔泳社)などがある。