不確実な時代のリーダーに必要な学びを得るために【Stylish Ideaメールマガジン vol.193】

シナリオプランニングと対話型組織開発のセミナーを開催するため、最近は組織関連の文献を読んでいます。

そのうちの一冊『組織開発の探究』の中で、組織開発の哲学的な基盤をとしてジョン・デューイや関連する人物の思想が紹介されています。

詳しくは、本書に譲りますが、その中でデューイの思想と組織開発のつながりとして次の2点を紹介しています。

(1) 学習や変化の源泉を「経験」においている点
(2) 変化につながるきっかけとして「振り返り」を位置づけている点

この2点につながるものとして、本書ではジョン・デューイの次の言葉が紹介されています。

We don't learn from experience.We learn from reflecting on our experience.
(私たちは経験から(直接)学ぶのではない。経験を内省(reflection)するときに学ぶのだ)

シナリオプランニングは、これからの時代にとても必要な手法だと思います。

そのため、弊社の公開セミナーや企業研修に参加してくださった人には、ぜひとも日々実践していただきたいと思っています。

しかしシナリオプランニングのすべてのプロセスを誰もが日常的に使える機会があるかというと、実のところ、そうではありません。

しかし、シナリオプランニングをきちんと体験したことがある人はわかるとおり、シナリオプランニングを学ぶことから得られるのは手法についての理解だけではありません。

例えば、シナリオプランニングをやる過程で、自分の視点の狭さに気がついたり。

何気なく考えていた環境変化を自分事として考えると、まったく違う見え方がしてきたり。

あるいは不確実な世界で意思決定をする際につきものの「おぼつかなさ」を味わったり。

普段なら考えないような長い未来のことを考える過程で、手法を学ぶ以外にも、それぞれの立場でたくさんの経験をします。

例えば、明確な根拠を持てない中で意思決定するという「おぼつかなさ」を経験することは、これからのリーダーに必須のことでしょう。

シナリオプランニングを体験する過程では、どのような未来を描いたのかはもちろん重要。

しかし、それと同時に、未来を描いていく中で、どのような経験をしたのかを内省することで、不確実な時代にリーダーに必要な学びを得ることができるのです。

そして、シナリオプランニングを実践する際は、単にシナリオ作成のステップを追うだけではなく、そこから得られる経験を学びにつなげるためのデザインを予めしておくことが欠かせないのです。

コラム執筆者:新井 宏征(あらい ひろゆき)

株式会社スタイリッシュ・アイデア 代表取締役

東京外国語大学大学院修後、SAPジャパン、情報通信総合研究所(NTTグループ)を経て、現在はシナリオプランニングやプロダクトマネジメントの考え方を応用し、事業と組織の両面からクライアントの変革を支援するコンサルティング活動に従事。

Saïd Business School Oxford Scenarios Programmeにおいて、世界におけるシナリオプランニング指導の第一人者であるRafael Ramirezや、Shell Internationalでシナリオプランニングを推進してきたKees van der HeijdenやCho-Oon Khongらにシナリオプランニングの指導を受ける。

その内容を理論的な基礎としながら、2013年の創業以来、日本の組織文化や慣習にあわせた実践的なシナリオプランニング活用支援を行っている。

資格として、PMP(Project Management Professional)、英検1級、TOEIC 990点、SAP関連資格などを保有している。

主な著書に『実践 シナリオ・プランニング』、訳書に『プロダクトマネジャーの教科書』、『成功するイノベーションは何が違うのか?』、『90日変革モデル』、『世界のエグゼクティブが学ぶ 誰もがリーダーになれる特別授業』(すべて翔泳社)などがある。