「未来の記憶」を元に振り返る【Stylish Ideaメールマガジン vol.190】

1日で完結するシナリオプランニング活用講座の集中講座を久々に開催しました。

通常開催している2日版の講座も含めて、これまで何度も開催していますが、その度に良くなっている講座だと自負しています。

そうなってきているのも、これまでにたくさんの人がこの講座を受講してくださり、いろいろなフィードバックをしてくれるから。

毎回、公開セミナーやクライアントさん向けのワークショップの後は1人で振り返りをしていて、そこで出てきたものを、次に盛り込んでみて、その結果を元にまた振り返りをして…の繰り返し。

こうして、いわば「過去の記憶」の蓄積が、今の講座の土台になっていると言えます。

シェルでシナリオプランニングに取り組んでいたキース・ヴァン・デル・ハイデンは、シナリオプランニングがもたらすものを新しい「未来の記憶」だと表現しています。

「未来の記憶」を持つことによって、次のようなことが可能になると紹介しています。

未来に思いをめぐらせることにより、それまでなら気づかずにやり過ごしてしまっていたような状況の変化を、感じ取ることができるようになる。
たとえ一度思いをめぐらせたシナリオが現実には起こらないとしても、いま何が起きているのかについて認識し、判断できるような思考回路が生まれてくる。
そして、物事を観察し、瞬時に反応していくことにも長けていく。
『シナリオ・プランニング』114ページ )

私たちが過去の出来事を元に振り返りをして、そこから教訓を得て、次につなげていくように、シナリオプランニングでは、未来において起こり得る可能性を元に「振り返り」をして、そこから教訓を得て、未来につなげていくのです。

どんなに貴重な経験をしたとしても、その経験を丁寧に振り返って、そこから得たものを次に活かしていかなければせっかくの経験も無駄になってしまいます。

同じようにシナリオプランニングで描いた未来も、ただ描いただけで終わっていては、せっかくかけた時間と労力が無駄に終わります。

そのために作ったシナリオをアウトプットではなくインプットとして、未来に向けた振り返りをして、そこから得たものを事業や組織、個人の変容に活かしていく

そこまでやることで、シナリオプランニングが本当に活かされるようになるのです。

コラム執筆者:新井 宏征(あらい ひろゆき)

株式会社スタイリッシュ・アイデア 代表取締役

東京外国語大学大学院修後、SAPジャパン、情報通信総合研究所(NTTグループ)を経て、現在はシナリオプランニングやプロダクトマネジメントの考え方を応用し、事業と組織の両面からクライアントの変革を支援するコンサルティング活動に従事。

Saïd Business School Oxford Scenarios Programmeにおいて、世界におけるシナリオプランニング指導の第一人者であるRafael Ramirezや、Shell Internationalでシナリオプランニングを推進してきたKees van der HeijdenやCho-Oon Khongらにシナリオプランニングの指導を受ける。

その内容を理論的な基礎としながら、2013年の創業以来、日本の組織文化や慣習にあわせた実践的なシナリオプランニング活用支援を行っている。

資格として、PMP(Project Management Professional)、英検1級、TOEIC 990点、SAP関連資格などを保有している。

主な著書に『実践 シナリオ・プランニング』、訳書に『プロダクトマネジャーの教科書』、『成功するイノベーションは何が違うのか?』、『90日変革モデル』、『世界のエグゼクティブが学ぶ 誰もがリーダーになれる特別授業』(すべて翔泳社)などがある。