Education ではなくLearning【Stylish Ideaメールマガジン vol.188】

MITメディアラボで所長を務める伊藤穣一氏が、インターネット以前(Before Internet、BI)とインターネット以後(After Internet、AI)を比べ、私たちが目指すべき原則が変わったとしています。

その概要は、次の記事で読むことができます。

・伊藤穰一:逸脱からはじまる「学び」の実践 アカデミーヒルズ

この中ではBIとAIにおいて大事にされている原則を9つ取り上げ、対比して論じています。

中でもシナリオプランニングの世界観と合うのが、

「EducationではなくLearning」

という原則の違いです。
先ほどのリンク先の記事ではこう書かれています。

学びは自発的なもの、教育は与えられるものであり、本来は性質が異なります。
しかし、私たちの中には依然として「教育システムがないと、学びは生まれない」という意識があります。

「教育」のパラダイムでは、指導要領のような予め定められた学ぶ対象が決まっています。

一方、「学び」は定められた枠組みはなく、置かれている環境や自分の関心を元にして、自ら必要なものを決め、学んでいく状態です。

これは企業の文脈にも当てはめられます。

企業にとっての「教育」は、過去の実績や業界のトップ企業など、「教科書」に相当する学ぶべき対象が決まっている世界観です。

ただし、今の時代はそうではありません。「学び」の世界観への対応が必要な時代です。

自社を取り巻く環境の変化を幅広く読み取り、それによって起きる未来の可能性を想定し、それに合わせて新たな戦略や計画を検討する。

その後は、検討した戦略や計画に従いながら事業を進めていくものの、並行して環境変化を読み取ることも継続して続けていく。

その結果を踏まえて、既存の戦略や計画にこだわりすぎず、その場その場で最適なものに微修正していき、再びそれを繰り返していく。

このような外部の変化の理解と、内部の計画の微修正を(従来に比べて)細かく繰り返していく。

これが「学び」の世界観での企業の動き方です。

これを実行するにあたって、外部の環境変化を読み取り、不確実な環境変化の可能性を描く際に活用するのがシナリオプランニングです。

不確実性の高い時代の「学び」のために、シナリオプランニングは欠かせない手法なのです。

コラム執筆者:新井 宏征(あらい ひろゆき)

株式会社スタイリッシュ・アイデア 代表取締役

東京外国語大学大学院修後、SAPジャパン、情報通信総合研究所(NTTグループ)を経て、現在はシナリオプランニングやプロダクトマネジメントの考え方を応用し、事業と組織の両面からクライアントの変革を支援するコンサルティング活動に従事。

Saïd Business School Oxford Scenarios Programmeにおいて、世界におけるシナリオプランニング指導の第一人者であるRafael Ramirezや、Shell Internationalでシナリオプランニングを推進してきたKees van der HeijdenやCho-Oon Khongらにシナリオプランニングの指導を受ける。

その内容を理論的な基礎としながら、2013年の創業以来、日本の組織文化や慣習にあわせた実践的なシナリオプランニング活用支援を行っている。

資格として、PMP(Project Management Professional)、英検1級、TOEIC 990点、SAP関連資格などを保有している。

主な著書に『実践 シナリオ・プランニング』、訳書に『プロダクトマネジャーの教科書』、『成功するイノベーションは何が違うのか?』、『90日変革モデル』、『世界のエグゼクティブが学ぶ 誰もがリーダーになれる特別授業』(すべて翔泳社)などがある。