シナリオ・プランニングのワークショップで起きていること【Stylish Ideaメールマガジン vol.181】
シナリオプランニングでは10年後といった長期の未来の可能性を描きます。
その目的は、今の延長線上にはない未来の可能性を考えることで、想定外の未来にも対応できる対応策を考えること。
そういうことに取り組む手法だというと、シナリオプランニングのワークショップは「ぶっ飛んだ」未来の可能性を描き続ける、妄想の世界に浸る場だと思うかもしれません。
しかし、作成したシナリオをインプットとして経営計画や新規事業を作るということを考えると、そのシナリオが荒唐無稽のものではいけません。
つまり「今の延長線上にはない」とはいっても、なんでも良いわけではないのです。
「今の延長線上にはない」ことを無闇に妄想するのではなく、まずは、
【自分たちは、どういうことを『今の延長線上』だと考えているのか?】
と問いかけ、自分たちの思い込みを自覚します。
その上で、ある事象の未来の可能性として、自分たちの「延長線上」にはない可能性、つまり、自分たちが普段なら想定していなかった未来の可能性について考えていくのです。
普段なら想定していなかったことを考えるためには、まず、普段から想定していることを自分たちで自覚しなくてはいけません。
シナリオプランニングで発想を広げるというのは、自分が認識している世界を自覚して、その世界から一歩踏み出してみること。
そういう営みを、ワークショップに参加している一人一人が行い、それをチームとして対話をしながら共有し、共に「延長線上にはない」世界に踏み出していく。
そんなプロセスが、本当のシナリオプランニングのワークショップで起きていることなのです。
コラム執筆者:新井 宏征(あらい ひろゆき)

株式会社スタイリッシュ・アイデア 代表取締役
東京外国語大学大学院修後、SAPジャパン、情報通信総合研究所(NTTグループ)を経て、現在はシナリオプランニングやプロダクトマネジメントの考え方を応用し、事業と組織の両面からクライアントの変革を支援するコンサルティング活動に従事。
Saïd Business School Oxford Scenarios Programmeにおいて、世界におけるシナリオプランニング指導の第一人者であるRafael Ramirezや、Shell Internationalでシナリオプランニングを推進してきたKees van der HeijdenやCho-Oon Khongらにシナリオプランニングの指導を受ける。
その内容を理論的な基礎としながら、2013年の創業以来、日本の組織文化や慣習にあわせた実践的なシナリオプランニング活用支援を行っている。
資格として、PMP(Project Management Professional)、英検1級、TOEIC 990点、SAP関連資格などを保有している。
主な著書に『実践 シナリオ・プランニング』、訳書に『プロダクトマネジャーの教科書』、『成功するイノベーションは何が違うのか?』、『90日変革モデル』、『世界のエグゼクティブが学ぶ 誰もがリーダーになれる特別授業』(すべて翔泳社)などがある。