シナリオ・プランニングのワークショップで起きていること【Stylish Ideaメールマガジン vol.174】
冒頭でも書きましたように、先日は高知で日本石材産業協会の総会に参加。
同協会ではシナリオプランニングを活用し、業界の未来を考える取り組みを2年前から行っていますが、今回の総会もその一環。
このメールマガジンでもお伝えしているようにシナリオプランニングではシナリオを作成して終わりではなく、そこからが始まりです。
言い換えれば、シナリオを作成するだけではなく、作成したシナリオを使いこなすことが重要。
その観点から、日本石材産業協会の総会では、2017年に完成したシナリオを使って石材業界や協会の参加企業の未来を考えるためのワークショップを行いました。
ワークショップに先立って、私がシナリオプランニングの解説をしました。
前振りとして、高知での開催ということで、以前のメールマガジンでも紹介した『竜馬がゆく』の一節を紹介しました。
・戦略的対話を組織に生み出すために【Stylish Ideaメールマガジン vol.160】
https://www.stylishidea.co.jp/2018/01/12/newsletter-0160/
これをきっかけとして、言葉を変えることが自社や業界を変えていくことをお伝えしました。
では「言葉を変える」といっても、それとシナリオプランニングはどのような関係があるのでしょうか?
今回のワークショップ前のプレゼンでは、現在・未来・未来と現在の3つに分けて、それぞれで語られる言葉の違いを紹介しました。
「現在」だけしか見ていないと、つい目の前のことだけに振り回されてしまい、語られる言葉は【愚痴】が多くなる。
「未来」だけしか見ないようにすると、往々にして自分にとって都合の良い理想しか見ず、語られる言葉は【妄想】でしかなくなる。
「未来」の起こり得る可能性をシナリオで見て、バックキャスティングで「現在」に戻ってきて、目指したい未来への道筋を現実的に描いていく。
そこで語られる言葉は【希望】の言葉となる。
今年の1月に弊社の読書対話会セミナーで取り上げた『5年後の自分を計画しよう』には、希望についてこんなことが書かれています。
将来について胸躍るようなことを考えながらも、目の前に立ちふさがる難題にも気づいている状態だ。
希望を抱くとは、そういう状態だ。
シナリオプランニングの使い方はさまざまです。
作成したシナリオをインプットとして技術戦略を策定する場合もあれば、研究開発テーマを検討する場合もあれば、新規事業を検討する場合もあります。
ここまで挙げた業務に直結するものだけではなく、組織などのビジョンを検討したり、個人のキャリアを考えるためにも使います。
このように弊社ではさまざまな機会でシナリオプランニングを活用していますが、その根っこにあるのは、未来について「希望の言葉」で語る状態を作ること。
今回のワークショップでは、その根っこのところにまで下りていきながらワークの流れを作っていきました。
コラム執筆者:新井 宏征(あらい ひろゆき)

株式会社スタイリッシュ・アイデア 代表取締役
東京外国語大学大学院修後、SAPジャパン、情報通信総合研究所(NTTグループ)を経て、現在はシナリオプランニングやプロダクトマネジメントの考え方を応用し、事業と組織の両面からクライアントの変革を支援するコンサルティング活動に従事。
Saïd Business School Oxford Scenarios Programmeにおいて、世界におけるシナリオプランニング指導の第一人者であるRafael Ramirezや、Shell Internationalでシナリオプランニングを推進してきたKees van der HeijdenやCho-Oon Khongらにシナリオプランニングの指導を受ける。
その内容を理論的な基礎としながら、2013年の創業以来、日本の組織文化や慣習にあわせた実践的なシナリオプランニング活用支援を行っている。
資格として、PMP(Project Management Professional)、英検1級、TOEIC 990点、SAP関連資格などを保有している。
主な著書に『実践 シナリオ・プランニング』、訳書に『プロダクトマネジャーの教科書』、『成功するイノベーションは何が違うのか?』、『90日変革モデル』、『世界のエグゼクティブが学ぶ 誰もがリーダーになれる特別授業』(すべて翔泳社)などがある。