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what if と what for【Stylish Ideaニューズレター vol.031】

※イノベーション組織を作るためのアイデアを届けるStylish Ideaメールマガジンに掲載したコラムのバックナンバーです。最新のコラムをお読みになりたい方は、こちらからご購読ください。

what if と what for

◆「フレーム問題」
シナリオプランニングで未来の外部環境を考える際、最近では技術面での新しい要因としてロボットの話しが出てくることが増えてきました。

そのロボットというか、人工知能(AI)に関連する有名な話しに「フレーム問題」というのがあります。いろいろなところで取り上げられている話しなので、ご存じの方も多いかもしれません。

わたしがフレーム問題を最初に知ったのは、佐々木正人氏による『アフォーダンス-新しい認知の理論』の中ででした。

・『アフォーダンス-新しい認知の理論』

この本のプロローグで「動けないロボット」としてフレーム問題について紹介されています。

フレーム問題のロボットの話しには、少しずつ場面設定が違った派生系がありますが、基本的にはロボットの動力源であるバッテリーをしまっている部屋に時限爆弾が仕掛けられ、ロボット自ら部屋に入り、バッテリーを持ち帰ろうとするという設定です。

最初のロボットが失敗したあと、その失敗を活かして人工知能を改良した二台目のロボットが部屋に入ります。そのロボットは、最初のロボットのように間違えて爆弾まで一緒に持ち出さないよう、副次的に起きる可能性のあることすべてを考え始めます。

ここで、『アフォーダンス-新しい認知の理論』の本文を引用してみましょう(原文ままですが、ローマ数字を通常の表記に変えています)。

 さて、ロボット2は「部屋からバッテリーを取り出す」という使命を与えられると、いち早くバッテリーのある部屋に向かい、ワゴンの前で推論をはじめた。「ワゴンを引き出しても部屋の色は代わらない」、「ワゴンを引き出せば音がする」、「ワゴンを…」と、ワゴンを持ち出すことにともなって環境に起こる副次的結果のすべてについて考えつづけた。その間に、部屋のどこかで爆弾が爆発してしまった。
設計者はこの失敗から、行為にともなう副次的な結果のすべてについて推論していると、時間がいくらあっても足りないことに気づいた。そこで一つのアイディアを思いついた。「そうだ!ロボットに目的としている行為に関係している結果と、無関係な結果との区別を教えてやり、関係のないことは無視するようにすればよいのだ」と。ロボット3が完成した。
同じ状況にこの最新のロボットを置いてみた。ところがロボット3はぜんぜん動かない。ロボット3に「何をしているのか」と尋ねてみた。彼は答えた。「黙って!ぼくはこれからやろうとしていることに関係のないことを見つけて、それを無視するのにいそがしいんだ。関係のないことは何千とあるんだ…」。最新のロボット3が動き出す前に、部屋のどこかで爆弾が爆発した。(『アフォーダンス-新しい認知の理論』6ページ)

面白いお話しです。一方で、「笑えない話しだ」と思う人もいるかもしれません。

フレーム問題についてもう少し詳しく知りたい方は、この本やインターネット上にある解説などをご覧ください。例えば、少し設定が違いますがWikipediaにもロボットの話しが載っています。

・フレーム問題 – Wikipedia

◆シナリオプラニングの what if
what if という表現は「もし〜だったらどうなるか」といったような意味です。これはシナリオプラニングの洋書を読んでいると必ず一度は目にする表現でしょう。

シナリオプラニング集団として有名なGBN(Global BusinessNetwork)が公開している非営利向けのシナリオの解説資料がありますが、タイトルはそのまま what if になっていますね。

・WHAT IF? THE ART OF SCENARIO THINKING FOR NONPROFITS

この表現のとおり、シナリオプラニングとは、起こるかどうか定かではないが、起きてしまったら影響があるものについて、what if、つまり「もし、それが起きてしまったらどうするか」という姿勢で考えるための手法です。

そのために外部環境要因をできるだけ多く洗い出すという作業を行います。この「できるだけ多く」というのがくせ者です。一体、いくつの要因を出せば良いのでしょうか?

昨年出た『シナリオ・プランニング — 未来を描き、創造する』 の中では

「通常のワークショップでは、100項目程度のドライビング・フォースがすぐに挙がる」

という、なかなか無責任なことが書かれています(笑)。

では、50個では少ないのでしょうか?80個では、もうひとつなのでしょうか?あるいは150個出したらすばらしいのでしょうか?

正解は「場合による」です。

では、その「場合」とは何でしょうか?それを考えるために必要なのが what for なのです。

◆シナリオプラニングの what for
what for という表現は「何のために」という意味です。

何のためにシナリオを作成するのか。

何のためにシナリオプラニングプロジェクトを実施するのか。

そこを明確にし、そこに照らして考えない限り、外部環境要因をいくつ出せば良いのかを話しても意味はありません。

本来のシナリオプラニングをやる目的を鑑みて、それに合っている要因が出ていさえすれば10個でも十分ですし、逆にまったく関係ないものを100個も200個も出しても、最終的にそれは意味がありません。

もちろん、数がたくさん出ていた方がいろいろな角度からシナリオの軸を考えることができるというのはありますが、要するにそれは選択肢が増えるということだけなので、そこだけにこだわっていても、実はあまり意味がありません。

もっと正確に言えば、数を出すことが目標になってしまうと意味がないどころか、フレーム問題のように、本来かけるべきではないところに労力をかけ、結局、動けなくなってしまうということになりかねません。

このコラムでも何度か書いているように、シナリオプラニングはシナリオを作ることが最終的な目的ではなく、まずはシナリオを作り、それを「インプット」として次につなげることです。

・個人のためのシナリオプランニングの魅力と威力(シナリオプランニングの現場から)

このところシナリオプラニングの新刊が出たこともあいまって、さまざまなシナリオプラニングのワークショップや読書会が開催されていますが、中には手段と目的をはき違えてしまっているようなものも見受けられます。

そうなると、「良い」シナリオを作ることが目的となり、結果、外部環境要因をたくさん出すことに躍起となってしまいます。

フレーム問題に出てくるロボットのように、あらゆる what if を見据えようと、いろいろと考えすぎたあまり「爆発」してしまったというようなことにならないよう、what for の視点も、ぜひ忘れずに持ち続けていただきたいと思います。

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編集後記「眠い…」

先ほどから、ここに何を書こうか考えているのですが、とにかく眠いです。

前の用事が終わった後に入った新宿のタリーズで、さっきからあくびが止まりません。

珍しくスーツにネクタイという出で立ちなので、サボっているような風格が出ているでしょうか。

これだけ長いコラムを書いていたら、ここまで読んでくれる人はいないのかもしれないと思い、特に何を書くわけでもなく、配信作業に入りたいと思います。

眠い…。

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