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気づき中毒者にならない【Stylish Ideaニューズレター vol.036】

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気づき中毒者にならない

◆「気づき」に気づくとき
「気づき」という言葉があります。

あります、というよりも、このところさまざまなところで、この言葉を目や耳にします。

気になってこの言葉を辞書で調べてみたのですが、手元にある大辞林にも新明解(第六版と第七版の両方)にも、そのままの形で見出しにはなっていません。

動詞形の「気付く」という項目を新明解で見ると、新明解らしい丁寧な定義が書かれています(第六版、第七版とも)。

【気付く】
そこにその物があることや、そのような状態である(になった)ことを、何かのきっかけで改めて知る。「誤りに– / そんな自明の事にどうして今まで気付かなかったのか」

新明解は定義だけでなく、例文の自由さにも定評がありますが、この「気付く」の例文は、定義にある「改めて知る」という、どこかしら後悔に似たような感じが滲み出ている例文で、とても良いですね(笑)。

新明解では、この後「運用」という解説部分で、「気付く」が名詞化した「気付き」という言葉について、次のように説明しています。

[運用] 名詞形「気付き」は、「お気付きの点は何なりとお申し付けください」などの形で、店員が客に対してサービスの気持で述べる言葉としても用いられる。

辞書に載っているかどうかだけで判断するならば、「気付き」という言葉は、「気付く」という動詞から連想される意味を名詞化した新しい使い方のようですね。

◆気づいているだけでは足りない
この「気づき」という言葉がどういう時に使われるのか観察すると、多くの場合、本を読んだり、セミナーに出たり、誰かとのやり取りがきっかけになっているようです。

これまで自分が知らなかったこと、わかっていたけど、なんとなく意識できていなかったようなことに気づくことができ、それはそれで良いことだと思います。

しかし、肝心なのは「気づき」そのものではなく、そのあとです。

「気づき」があるということは、これまでの自分にはなかったこと、足りなかったことである場合が多いでしょう。

そこで、その部分をどうにかしていくという次のステップが必要になってきます。

わたしがシナリオプランニングの解説でよくご紹介している、次の流れで言えば、

【認識】→【思考】→【行動】

「気づき」というのは、このうちの【認識】に相当する部分で、そこから自分なりにその意義を【思考】し、【行動】に移していかなければなりません(その点で、安易に行動を強調するような物言いにも賛同はできないのですが、それについてはまた改めて)。

つまり、気づいているだけではダメで、それを行動に移し、そしてドラッカー流に言えば「成果をあげる」ところまでいかなくてはいけないわけです。

これをドラッカーは「自分をマネジメントする」という言い方をし、『経営者の条件』の中で説いています。

・『経営者の条件』
(わたしが参照しているのは1995年のドラッカー選書版です)

同書のまえがきでドラッカーは、「自分をマネジメントできない者が、部下や同僚をマネジメントできるはずがない」と看破した上で、「成果をあげる能力は修得できる」と述べ、そのために必要なことを一冊をとおして伝えています。

◆マネジメントは知識ではない
しかし、成果をあげられるようになろうと、せっせと本を読んだり、嬉々としてセミナーに出てもそれで十分ではありません。

それについてドラッカーはこう言います。

知力や想像力や知識は、あくまでも基礎的な資質である。それらの資質を成果に結びつけるには、成果をあげるための能力が必要である。
知力や想像力や知識は、成果の限界を設定するだけである。

そして、終章まできて、ドラッカーは「オチ」をこう書いています。

本書は、教科書ではない。その理由の一つは、成果をあげることは、修得はできるが、教わることはできないからである。つまるところ、成果をあげることは、教科ではなく自己修練である。

書店に行けば、マネジメント関連の本はマーケティングや会計、ファイナンスなどのコーナーに近いところに並んでいます。だからといって、それらの分野と同じように、知識を身につければ最低限は使えるようになるというものではありません。

ドラッカーも書いているように、あくまで自己修練の結果、身につくものです。頭の良さや知識の豊富さは関係ありません。ましてやセミナーに出ていればマネジメントができ、成果をあげられるようになるものではありません。

◆一歩ひいて考える時間を
冒頭でも書いたように「気づき」を得ることは大切なことです。

しかし、その瞬間はアドレナリンが出るような感覚を得て(実際、そうかどうかはわかりませんが)、すっかりやみつきになり、再びそのような感覚を得られる機会を探し始めてしまいます。

そこでセミナーや勉強会を渡り歩き、SNSにあふれる「名言」や「いい話」に触れ、自分の「気づき」をSNSやブログなどに書き残すというサイクルにはまってしまう人がいます。

そのようなサイクルを全面から否定するものではありません。特に書き残すことで自分の記憶に残しやすくなる効果は期待できるでしょう。

しかし、冒頭から書いているように、気づいているだけで成果をあげられる自分に変わるわけではありません。

その気づきを元に考え、行動し、自己鍛錬をする、しかもその場は実際の仕事や日々の生活の場、という機会を地道に積み重ねていく。おそらくそういうことを通してでしか、マネジメントは身につきません。

SNSなどのプラットフォームのおかげで、誰もがセミナーやイベント、対話の機会などを作りやすくなり、そこに参加するのを楽しいと感じる人もいるでしょう。

そういう方こそ、ぜひその時間の何割かを自分だけのための時間に割り当て、その気づきを元に、何をしなければいけないのかを考えてみると良いでしょう。

では、その「何を」をどうやって考えるのか。やはりドラッカーを元にして、次回、考えてみたいと思います。
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編集後記「英語で読むドラッカー?!」

コラム中にも書いたように、ドラッカー本は「ドラッカー名著集」としてハードカバーの豪華な感じの装丁で出ていますが、個人的にはその前のソフトカバーで出ていた「ドラッカー選書」が気に入っています。

名著集になって訳し直したと言われていますが、「選書」と「名著集」でかぶっているタイトルは、意地を張って「選書」の方で読んでいます。

どちらのシリーズも担当されている上田さんの翻訳は、たしかに読みやすいのですが、訳されていない部分があったりするので、そのうち原著をきちんと読んでもいいかなと思っています。

『経営者の条件』については、タイトルの「経営者」という訳語がいかめしい感じもありますが、原著は “The Effective Executive”というタイトル。

・”The Effective Executive”

・”The Effective Executive”(Kindle版)

Kindle版は938円なので、新書並みの価格で読めるんですね。

タイミングを見つけて、「英語で読むドラッカー勉強会」でもやろうかと思ったり思わなかったりしています。

はい、いつもの思いつきではありますが…。

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