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ベネフィットと手間を比べる【Stylish Ideaニューズレター vol.043】

※イノベーション組織を作るためのアイデアを届けるStylish Ideaメールマガジンに掲載したコラムのバックナンバーです。最新のコラムをお読みになりたい方は、こちらからご購読ください。

ベネフィットと手間を比べる

◆ビジネスモデルと顧客ベネフィット
ここしばらくの「プロダクトマネジメントの現場から」では、改めてビジネスモデルというものをどうとらえるのかお伝えし、そのあと「顧客ベネフィット」という観点から競合の見方をご紹介しました。

・本当の競合は誰なのか?(プロダクトマネジメントの現場から)
https://www.stylishidea.co.jp/2014/06/06/find-your-customers-benefit/

これらの記事に書いた内容、特に顧客ベネフィットを考えるという点については、「こんなの当たり前だよ」という声も聞こえてきそうです。

しかし、知識として知っていても、実際にビジネスの現場で頭を使い出すと、ついつい顧客視点ではなく、自分たち寄りの視点で考えてしまいます。

その視点をパターン化すると、よくあるのが【自社都合】、【リソース】、そして【スペック】です。

・【自社都合】「今月までにあとこれだけの売上を…」
・【リソース】「うちが得意な技術を活かすために、これを使って…」
・【スペック】「やっぱり今の時代、処理速度は最低これくらいで…」

これらのパターンを、すべて自分が消費者として見てみると、この視点がいかにおかしいのかがわかると思います。

例えば、飛び込みの営業さんに「弊社のノルマがかかっているので、どうしても買っていただけないでしょうかっ!?」と自社都合で言われても、不憫には思うかもしれませんが、それだけで何かを買うことはないはずです。

◆ベネフィットだけでは十分ではない
こうやっていざ消費者視点になれば当然のことであり、言われると頭ではわかっていてもやってしまいがちなのが「自社視点の過ち」とも呼べるもの。

では、その過ちを犯さないように、徹底的に顧客ベネフィットを追求すれば良いかというと、実はそうとも言い切れないのです。

仮に顧客にとって大きなベネフィットがあったとしても、それを受け取るための労力が大きければ、一般的に、顧客はベネフィットをあきらめてしまいます。

皆さん自身の個人的な感覚を思い出していただくと想像がつくように、通常、人はなるべく労せずして、得をしたいと考えています。

ベネフィットを得たいと思うのは当然だとして、そのベネフィットを得るために費やす労力を、できる限り少なくしたいというのが多くの人が思っていることではないでしょうか。

◆こんなアプリ、使いますか?
例えば、仕事の生産性向上を劇的に改善してくれるiPhoneアプリがあるとします。

そのアプリを活用すれば、現状と比べて、最低でも毎月10時間分の時間を確実に浮かすことができ、その時間を、より創造的な仕事に振り向けることができることがわかっています。

とても魅力的なアプリですね。ぜひ使ってみたいと思いました。

しかし、このアプリは仕組みや操作がとても複雑で、それを習得するまでには3日間に渡るトレーニングを受講するか、それと同等の学習時間が必要となります。

さらに初期設定として、自分の現在の生活パターンを忠実に再現するためのデータを入力するために計測の時間が必要となり、これに丸1週間の期間が必要になります。しかも、途中で入力漏れなどがあると、最初からやり直さなければなりません。

となると、すべてがスムーズにいったとしても、トレーニングに3日間、データ入力のための計測期間として7日間の10日分の時間を最初に費やさなければなりません。

さて、皆さんはこのアプリを使おうと思うでしょうか?

わたしならインストールはするかもしれませんが、初期設定時に使うのをあきらめるはずです(笑)。

人によっては「たしかに最初に時間はかかるけど、毎月10時間分の時間が浮くとなれば、2年以内に初期設定分の元は取れるはず!」と考えるかもしれませんが、実際にはなかなかいないはずです。

◆ベネフィットと手間を比べる
アプリの例からわかるように、わたしたちは何かを選択する際、無意識のうちにベネフィットと、それを得るための労力を比較しています。

あるいはもっとシンプルに「手間と比べている」と言った方がわかりやすいでしょうか。

そのため、顧客に提案する価値を考える時には、顧客にとって何が嬉しいのかというベネフィットだけではなく、それを得るための労力をなるべく少なくすることも合わせて考えなければいけません。

例えば、アップルのMP3プレイヤーであるiPodが出始めたとき、競合する国内メーカーのプレイヤーにはそれなりの厚みがある説明書がついていました。しかし、iPodやその他のアップル製品には説明書らしきものは付いていないと言って良いほどのものしか入っていません。

これが意味しているのは、アップル製品は、顧客がそれを使う際に必要とする労力を可能な限り少なくすることも考え抜かれた製品だということなのです。

ぜひ皆さんも、製品やサービスのベネフィットだけではなく、それを得るための労力についても目を向けるようにしてください。
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編集後記「ポール・アダムス」

本文が長くなってしまったので、補足のような内容をここで。

今回の内容を考えるヒントになったのが、元Googleのポール・アダムスによる、Google+の教訓をまとめたこの記事。

・Product lessons we can learn from Google+ | Inside Intercom
http://insideintercom.io/what-we-can-learn-from-google-plus/

ポール・アダムスは、プロダクトデザインなどを専門家とし、ダイソンなどのメーカー勤務を経て、GoogleではGoogle+の他、GmailやYouTubeなどのサービスも担当していました。

その後、Facebookに移り、Facebookのプロダクトマネジャーやブランドデザインのトップを務めた後、現在はIntercomという会社で製品担当VPを務める、多彩なキャリアの持ち主。

彼の名前を聞くのは初めてでも、『ウェブはグループで進化する』という本を読んだことがある人もいるかもしれませんね。

・『ウェブはグループで進化する』

この記事の2番目には次のような見出しになっています。

2. PERCEIVED BENEFITS NEED TO BE GREATER THAN PERCEIVED EFFORT”

ざっくり言うと「ベネフィットはそれを実現するために必要な労力よりも大きくなければならない」というものです。

とても面白い、役に立つところがごろごろある記事なので、改めてブログで紹介しようと思います。

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