シナリオプランニング実践・学習の3段階【Stylish Ideaメールマガジン vol.265】
シナリオプランニングの本を読むと、2軸を使った複数シナリオのつくり方として、
「不確実性が高く、影響度が大きい要因から2つの外部環境要因を選んで、軸をつくり、それを組み合わせて複数シナリオをつくります」
というような解説がのっています。
たしかに、このとおりなのですが、新刊『実践 シナリオ・プランニング』では、複数シナリオのつくり方を、次のサブステップに細分化して紹介しています。
(1) 軸の作成
(2) 2軸の組み合わせ
(3) 複数シナリオの中身の検討
これまでの解説を3つに分けただけだと見ることもできますが、この3つに分けることは、複数シナリオを完成させるまでに3つのチェックポイントがあることを意味しています。
大まかに言うと、
(1) 作成した軸はこれで良いのか?
(2) 軸の組み合わせはこれで良いのか?
(3) この複数シナリオの中身はプロジェクト等の目的にかなったものになっているか?
という3点をチェックすることになります。
さらに、この3つのサブステップに分けることは、シナリオプランニングの実践や学習にもつながってきます。
新刊『実践 シナリオ・プランニング』では、シナリオプランニングの実践を次の3段階に分けています。
第1段階:未来創造ダイアローグ【書籍 第4章で解説】
→シナリオを読み、対話する
第2段階:未来創造ダイアローグ+(プラス)【書籍 第5章で解説】
→用意された軸を組み合わせてシナリオをつくり、
対話する
第3段階:シナリオプランニング【書籍 第6章で解説】
→ゼロからシナリオプランニングを実践する
この実践の3段階と、冒頭で紹介した複数シナリオ作成の3つのサブステップは次のように対応しています。
第1段階:(3)複数シナリオの中身の検討のみに取り組む
第2段階:第1段階に加え、(2) 2軸の組み合わせにも取り組む
第3段階:3つのサブステップすべてに取り組む
見ていただくとわかるとおり、紹介している3段階の実践ステップは、3つのサブステップを逆にたどっている形になります。
この段階にすることで、実践という観点では、シナリオプランニングに取り組みを検討する際、条件(かけられる時間や予算など)によって実践方法を選ぶことができるようになります。
第1段階の「未来創造ダイアローグ」では、予め作成し複数シナリオを元にした対話を行います。
この時、「予め作成した複数シナリオ」は、弊社のようなシナリオプランニングの専門家がつくったものを使うというケースだけではなく、社内の一部のメンバーでつくった複数シナリオを他のメンバーに読み、対応策などを考えてもらうという状況にも応用することができます。
また、学習という観点では、この3段階でシナリオプランニングに学んでいくことで、「将来における複数の不確実な可能性を踏まえて対応策を検討する」というシナリオプランニングの取り組みの中でももっとも重要なステップを理解することからはじめ、段階的に複数シナリオのつくり方をマスターすることができるのです。
このように説明すると、
「学習という観点では、この3段階を進めることが意味があるかもしれないが、複数シナリオを読むだけで "実践" というのはどうなのか?」
という疑問を持つ方もいらっしゃる方もいるかと思います。
その点については、次回のメールマガジンで詳しく解説していきたいと思います。
コラム執筆者:新井 宏征(あらい ひろゆき)

株式会社スタイリッシュ・アイデア 代表取締役
東京外国語大学大学院修後、SAPジャパン、情報通信総合研究所(NTTグループ)を経て、現在はシナリオプランニングやプロダクトマネジメントの考え方を応用し、事業と組織の両面からクライアントの変革を支援するコンサルティング活動に従事。
Saïd Business School Oxford Scenarios Programmeにおいて、世界におけるシナリオプランニング指導の第一人者であるRafael Ramirezや、Shell Internationalでシナリオプランニングを推進してきたKees van der HeijdenやCho-Oon Khongらにシナリオプランニングの指導を受ける。
その内容を理論的な基礎としながら、2013年の創業以来、日本の組織文化や慣習にあわせた実践的なシナリオプランニング活用支援を行っている。
資格として、PMP(Project Management Professional)、英検1級、TOEIC 990点、SAP関連資格などを保有している。
主な著書に『実践 シナリオ・プランニング』、訳書に『プロダクトマネジャーの教科書』、『成功するイノベーションは何が違うのか?』、『90日変革モデル』、『世界のエグゼクティブが学ぶ 誰もがリーダーになれる特別授業』(すべて翔泳社)などがある。