シナリオプランニングは"優れた"手法なのか?【Stylish Ideaメールマガジン vol.242】
先日、未来のことを検討する手法についての論文を読んでいたところ、その中でシナリオプランニングについて書かれていました。
その論文を最後まで読んでいくと、最後の方で「○○(その著者らが取り組んでいる手法)とシナリオプランニングを比較すると、○○の方が優れた手法である」ということを書いていました。
なぜ、シナリオプランニングよりも○○の方が優れているかという理由については、シナリオプランニングは消極的な環境変化対応に特化した手法であって、新規事業等を検討するには適していないというものでした。
このメールマガジンでも何度か書いているとおり、シナリオプランニングは「手法」のひとつです。
そして、シナリオプランニング以外にも、未来のことを検討するための手法はあります。
では、そういった未来を検討する手法と比べて、シナリオプランニングが優れているのか?と問われると、それは答えられません。
「スプーンとフォークはどちらが優れていますか?」という問いかけがナンセンスであるように、手法や道具の優劣を比較することは、個人的にはあまり意味がないと思っています。
もちろん、好き嫌いはあるでしょう。当然、シナリオプランニングは弊社が好んで使う手法ではありますが、他の手法との優劣というのは、状況や目的により、変わってきます。
実際、シナリオプランニングに取り組みたいというお話を受けたものの、そのお客さまの状況を踏まえ、別の手法から取り組んだこともあります。
さらに、実際にはシナリオプランニングだけを使うことはありません。
上記で書いたとおり、シナリオプランニングは環境変化に備えるために有効な手法ですが、新規事業などを検討するためには、他の手法を組み合わせることで目的を達成することができます。
世の中には経営のさまざまな場面で使われる手法があり、それぞれ独自の特徴を持っています。
大切なのは、ひとつの手法にこだわりすぎず、またひとつの手法だけであらゆる課題の解決を期待せずにいることです。
その上で、それぞれの手法の特徴を正確に理解し、置かれている状況や取り組みの目的に応じて、適切なツールを選択することが現実的です。
例えばシナリオプランニングは不確実な環境変化に対応するための手法で、変化が激しく、先のことが読みにくい時代に、組織での戦略や計画立案、事業開発、人材育成を行う目的で効果を発揮します。
このようなシナリオプランニングの特徴を踏まえ、良い悪いといった主観的な見方に振り回されず、活用する場面を検討していってください。
コラム執筆者:新井 宏征(あらい ひろゆき)

株式会社スタイリッシュ・アイデア 代表取締役
東京外国語大学大学院修後、SAPジャパン、情報通信総合研究所(NTTグループ)を経て、現在はシナリオプランニングやプロダクトマネジメントの考え方を応用し、事業と組織の両面からクライアントの変革を支援するコンサルティング活動に従事。
Saïd Business School Oxford Scenarios Programmeにおいて、世界におけるシナリオプランニング指導の第一人者であるRafael Ramirezや、Shell Internationalでシナリオプランニングを推進してきたKees van der HeijdenやCho-Oon Khongらにシナリオプランニングの指導を受ける。
その内容を理論的な基礎としながら、2013年の創業以来、日本の組織文化や慣習にあわせた実践的なシナリオプランニング活用支援を行っている。
資格として、PMP(Project Management Professional)、英検1級、TOEIC 990点、SAP関連資格などを保有している。
主な著書に『実践 シナリオ・プランニング』、訳書に『プロダクトマネジャーの教科書』、『成功するイノベーションは何が違うのか?』、『90日変革モデル』、『世界のエグゼクティブが学ぶ 誰もがリーダーになれる特別授業』(すべて翔泳社)などがある。