未来創造ダイアローグで目を向ける”わからない”状態【Stylish Ideaメールマガジン vol.294】

メールマガジンバックナンバーシリーズ
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ここ最近、未来創造ダイアローグⓇを公開セミナーでも、個々の企業向けでも実施することが増えてきました。

個々の企業向けに実施する場合、未来創造ダイアローグだけを実施することもありますし、本格的にシナリオプランニングに取り組む前段階として、未来創造ダイアローグを実施することもあります。

現在公開セミナーとして実施している「入門編」では、2時間という限られた時間の中で未来創造ダイアローグのもっとも重要な部分にしぼって体験してもらう設定にしています。

今後は、個別のお客さま向けに提供しているような対応策までをじっくり考えるだけの時間的な余裕がある設定での講座も検討しています。

未来創造ダイアローグのファシリテーターとして意識していること

その未来創造ダイアローグに取り組む際、私がファシリテーターとして意識しているのは「”わからない”状態に気づいてもらうこと」です。

こう言うと「ファシリテーターは、普通、参加者が”わかるように”うながすためにいる人ではないのか?」と指摘されることがあります。

もちろん、私としても、参加している方をあえて混乱させて、「わからなくしてやろう!」と仕向けているわけではありません。さすがに、それはひどすぎます(笑)。

そうではなく、参加者の人が「ん?未来のこの世界は想像しにくいな?」とか「この世界の可能性はまったく考えられない」となった場合に、すぐに想像できるようにしたり、可能性を考えられるようなことを、あえてしないようにしています。

そうではなく、そのように悩んでいることをきっかけとして、それぞれの人の「”わからない”状態に気づいて」もらえるようにしています。

なぜ、あえて、そのようなことをしているのかというと、ひとつには、過去のメールマガジンでも何度か紹介しているネガティブ・ケイパビリティの重要性に気づいてもらうことを意図しています。

 

「”わからない”状態」を引き起こす知識の不足


ただし、実際にはそれだけではありません。

自分が「”わからない”状態」に目を向けることは、いろいろなことに気づく入口になるのです。

与えられた複数シナリオを読んでいて、あるシナリオ(世界)を想像しにくいとなった場合、まず考えられるのは知識の不足です。

そのシナリオの元となっている軸に関する知識そのものが不足している場合、やはり、2本の軸を組み合わせた世界を想像することは簡単ではありません。

この場合、あるシナリオについて考えたものの”わからない”状態になったことで、将来の可能性を考えるために、新しい知識を身につけなければいけないと考えることにつながります。

「”わからない”状態」を引き起こすもうひとつの可能性


あるシナリオ(世界)を想像しにくい場合、もうひとつ考えられる可能性は、自分の信念や思い込みに反しているということかもしれません。

先日、あるワークショップで、現在の資源価格の高騰なども踏まえ、今後、商品開発や生産に必要な資源の入手が一層困難になるという可能性を含んだ軸をつくり、未来創造ダイアローグを実施しました。

すると、参加者の1人から、「その可能性を含むシナリオは考えられない」という意見が出ました。

よく話をうかがってみると、「 現在のような状況はあくまで一過性のもので、この状況が将来に渡って続くことは、まず考えられない。なぜなら、これまでも、このような状況はひとときのもので、しばらくすれば解消した。だから、このような可能性を含むシナリオは考えられない。」というご意見でした。

この方のお話からわかるのは、”わからない”状態が起きる原因は知識の不足だけではないということ。知識があったとしても、「そんな世界は起こるわけはない」と思い込んでいれば、当然、その世界のことは考えにくくなります。

別の見方をすれば、知識が不足しているわけではないのに”わからない”状態が起きている状態は、そこに自分の思い込みや信念などが絡んでいる可能性があるのではないか?と考えるきっかけを与えてくれることになります。

思い込みが阻む状態をどうとらえるのか?


ちなみに、先ほど紹介した参加者の方にまずお伝えしたのは、「そのような意見があるということは理解しましたし、そのような考えを否定するつもりはありません」ということ。不確実な未来のことですので、私としても、その方の考えが「絶対にあり得ない」とは言えません。

その上で、次のようなことをお伝えしました。

「 たしかに、そのような可能性はあると思います。しかし、シナリオプランニングでは、自分の信念や予測はいったん脇に置いておいて、『もし、このようなことが実際に起きたとしたら、どんな世界になるのか?そして、そのような世界になることに備えて、今から準備するべきことはあるのか?』ということを考えます。

今の新型コロナウイルス感染症の拡大やロシアのウクライナ侵攻などにしても、数年前の私たちに伝えたら『そんな世界は起こるわけはない』と反応したようなものだったはずです。一度、○○さんのお考えは置いておいて、考えてみてはいかがですか?」

その後、その方はしばらくジーッと模造紙を見ながら考え込んでいたものの、いざ考える糸口が見えてくると「うーん、たしかに、こうなったらマズいなぁ」と言いながら、次々と今までにない発想を付せんに書き出していきました。

シナリオプランニングに取り組む意義と未来創造ダイアローグ


シナリオプランニングをやっていると、どうしても成果物としての複数シナリオだけに目がいきます。ネット上で紹介されているのも、成果物としてのシナリオだけが目立ちます。

しかし、シナリオプランニングに実際に活用していくことを考えると、成果物だけではなく、それを作成していくプロセスも同じくらい重要です。

シナリオプランニングに取り組んでいくプロセスで、取り組んでいる人が、自身の知識の不足や思い込みに気づき、新たな視点から世界を見ることができるようになることは、シナリオプランニングに取り組む大きな意義です。

未来創造ダイアローグは、そのプロセスを誰にとってもやりやすくした手法。

そのため、シナリオプランニングが初めての人にとってはもちろん、組織にシナリオプランニングの考え方を浸透させていきたいという場合にも適したものなのです。

『実践 シナリオ・プランニング』

『実践 シナリオ・プランニング』表紙
「シナリオ・プランニング」とは、組織や個人が未来を見据え、不確実性をチャンス・機会に変えていくための思考法。

シナリオ・プランニングを活用し、自分たちの「シナリオ」を作成することで、過度に悲観的な予測に立って不安に飲み込まれることも、将来の可能性を過度に楽観視することもなく、「健全な危機感」をもって未来を捉え、将来に対する備えをしていくことができるようになります。

本書ではシナリオ・プランニングの理論的な理解はもちろんのこと、シナリオ・プランニングの「実践」をあらゆる組織で無理なく進めていくための方法論、さらには、シナリオ・プランニングの「実践」をもとに、人と組織の成長を促すヒントを解き明かします。