リーダーを育てるためのシナリオプランニング活用【Stylish Ideaメールマガジン vol.290】

メールマガジンバックナンバーシリーズ
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先日「パーパス時代の”未来創造リーダー”育成の勘所」という無料セミナーを開催し、シナリオプランニングとリーダーシップやリーダー育成についてご紹介しました。

 日々のコンサルティングや研修の中でも「リーダーシップ」や「リーダー育成」をテーマとして、シナリオプランニング活用を求められる機会も増えてきました。

 さまざまなお客さまと、そのテーマで実践をし、しかもその後の参加者の変化を見ていると、シナリオプランニングとリーダーシップの親和性が高いことに気づきます。

どちらも必要な2つの頭の使い方

私自身、日本で生まれ、日本で育ってきて今に至るわけですが、そのような環境の中で求められてきた「頭の使い方」について振り返ってみると、予め範囲が決まっているものに対して正解を出すという頭の使い方が主でした。 

このメールマガジン(あるいはウェブ上での記事)を読んでいらっしゃる方の中にも、「私も同じだ」とうなづいてくださる方が多いかもしれません。 

最近では、そのような頭の使い方に対しての批判が今まで以上に増えているように思えますが、私としては、必ずしも全面的に否定するようなものではないと思っています。 

なぜなら、そのような頭の使い方によって学んだ知識が、今後、新しいことを学んだり、考えるための土台となるからです。 

ただし、そのような頭の使い方だけでは十分ではないことも確かです。 

今のような時代にあっては、ビジネスの場面はもちろん、政治や行政、教育など、さまざまな場面で、自分たちで考えるべき範囲を定め、その中から特に考えるべき観点を見つけるという頭の使い方が必要になってきます。 

このような頭の使い方をひと言で言うと「問題発見」と呼ぶことができるでしょう。 

しかし、実際にこの「自分たちで考えるべき範囲を定め」ることをして、さらに「その中から特に考えるべき観点を見つける」ことに取り組むのは、決して簡単なことではありません。 

なぜなら、従来、私たちの多くが慣れ親しんできた予め範囲が決まっているものに対して正解を出すという頭の使い方でできたような「正解との照らし合わせ」が(少なくとも短期的には)できないからです。 

言い換えれば、この自分たちで考えるべき範囲を定め、その中から特に考えるべき観点を見つけるという頭の使い方を実践していくためには、自分が取り組んでいることや出した結論が合っているかどうかわからないままで、取り組みを続けていかなくてはいけないからです。

シナリオプランニングをどう活用していくのか

このことを疑似体験できるのが、シナリオプランニングの実践です。

 シナリオプランニングを実践していく中で、自分たちがつくった複数シナリオが合っているのかどうかは、その場にいる誰にもわかりません。 

もちろん、シナリオプランニングの専門家から見れば、それがシナリオプランニングの考え方に沿っているものになっているかどうかの判断をして、フィードバックすることはできます。 

しかし、そこで描かれた未来は本当に起こり得るものなのか?起こり得るものだとしても、検討した未来の中身は十分なのか?抜け落ちている点はないのか?というようなことは、いくらシナリオプランニングの専門家であっても判断することはできません。 

このように明快な正解がない状態で複数シナリオなどの成果物を作成し、その成果物をインプットとして自社の対応策を考える過程では、常に「これで良いのか、わからない」という感覚がつきまといます。 

しかし、この感覚はシナリオプランニングの実践の中だけにとどまるものではありません。 

現在のような不確実な時代においては、組織におけるあらゆる活動の中で、この「これで良いのか、わからない」という要素を残したまま意思決定をし、行動していかなければいけません

そうはいっても、そのような感覚に対して無策では心許ない。 

そのため、例えばシナリオプランニングの実践の中では、「これで良いのか、わからない」という状態を前にして、

  • 可能な限りファクト情報を集めて判断する
  • 過去に同じようなことが起きた場合の事例を元に類推する
  • 考えている自分たちよりも現場感覚がある当事者に話を聞いてみる

などの手段をとおして、「明快にわかった」という状態にすることはできなくとも、「当てずっぽうで考えるよりは、はるかに根拠を持って考えることができる」状態にすることは可能です。

形式上の未来をつくることを超えたシナリオプランニング活用を

シナリオプランニングの実践をとおして、一度、このような経験を積んでおくと、実際の業務などの中で「これで良いのか、わからない」と感じる場面に遭遇したときも、そのまま当てずっぽうで進むのではなく、一度立ち止まり、「こういう時に、何をすれば、少しでも具体的に考える手がかりを得られるだろうか?」と考えることができるようになります。 

実際に弊社がこれまでにかかわったお客さまの参加者おひとりおひとりを見ていると、シナリオプランニングに取り組んで「これで良いのか、わからない」という場面に遭遇した際、そこで「ま、これでいいんじゃない」と勘だけに流されることなく、少しでも考える根拠を増やそうと、あらゆる策を講じた参加者の方が、その後も組織の中で活躍されている確率が高いです。 

このような将来のリーダー育成につながるシナリオプランニングに取り組むためには、形式上の未来をつくることにとどまらず、その過程にも目を向けて、「これで良いのか、わからない」という状態への向き合い方、対応の仕方にまで踏み込んだかかわり方をすることが必要になります。

このようなかかわり方は、参加者のひとりひとりに目を向けてかかわることになるため、簡単なことではありませんが、取り組む意義あるものだと感じています。 

戦略・計画策定や事業開発といった目に見える成果物に取り組むだけではなく、次の時代を担うリーダーを育てることも視野に入れたシナリオプランニング活用に、ぜひ取り組んでみてください。

『実践 シナリオ・プランニング』

『実践 シナリオ・プランニング』表紙
「シナリオ・プランニング」とは、組織や個人が未来を見据え、不確実性をチャンス・機会に変えていくための思考法。

シナリオ・プランニングを活用し、自分たちの「シナリオ」を作成することで、過度に悲観的な予測に立って不安に飲み込まれることも、将来の可能性を過度に楽観視することもなく、「健全な危機感」をもって未来を捉え、将来に対する備えをしていくことができるようになります。

本書ではシナリオ・プランニングの理論的な理解はもちろんのこと、シナリオ・プランニングの「実践」をあらゆる組織で無理なく進めていくための方法論、さらには、シナリオ・プランニングの「実践」をもとに、人と組織の成長を促すヒントを解き明かします。