「前提」を問い直すためのシナリオプランニングの取り組み方【Stylish Ideaメールマガジン vol.283】

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シナリオプランニングの頭の使い方の正反対にあるものはなんでしょうか?
 
という、なぞなぞのような問いかけをされたら、みなさん、どう答えますか?
 
「なぞなぞ」と書いてしまいましたが、決して引っかけとかではないので、素直に考えていただきたいのですが、いかがでしょうか?
 
正反対のものを考えるためには、元となるものの位置づけ(今回の場合はシナリオプランナー)を明確にした方が良さそうです。
 
私の『実践 シナリオ・プランニング』の最初の方、たとえば60ページに書いてあるものを参考にすると、シナリオプランニングとは「将来における不確実な可能性を考える」ことだと位置づけられています。
 
これを元にすると、シナリオプランニングの頭の使い方の正反対にあるものは「今の目の前のことを考える」ことだと言えます。
 
(「未来のことを考えることの正反対は過去のことなんじゃないか?」という考え方もあるとは思いますが、今回はそこまではいかずに考えてみます)
 

シナリオプランニングの正反対を考えるための「時間」と「対象」

この「将来における不確実な可能性を考える」と「今の目の前のことを考える」との違いは、大きく2つの観点での違いがあります。それは「時間」と「対象」です。
 
時間」という観点では、今の状況を前提とするのではなく、例えば5年後、10年後といった設定にして、「今ではないもの」を考えます。
 
対象」という観点は、なかなかイメージしにくいかもしれませんが、弊社では「影響ピラミッド」という枠組みを使って、考え方をご紹介しています(下図参照)。
 
 
(出所:実践 シナリオ・プランニング』166ページ
 
この図で「対象」について説明をすると、例えば「自社」の層だけを元にして、自社内にある技術や経験だけを元にしたり、「事業環境」の層を元にして潜在的な顧客が抱えている課題を元にして、製品やサービスを考えることが「目の前のこと」を考えることに相当します。
 
一方、シナリオプランニングでは、影響ピラミッドの一番下の「社会」の層を元にして不確実な可能性を考えていきます。
 

「今の目の前のこと」を前提にシナリオ・プランニングを考えてはいけない

 
なぜ、こんなややこしいことを話しているのかというと、シナリオプランニングの取り組みに失敗してしまっている場合の多くが、この話に関係しているからなのです。
 
拙著に限らず、シナリオプランニングについて紹介している本やコンサルタントの方の説明を見ると、上で紹介した2つの観点のうち少なくとも「時間」に関しては、「未来の時間軸を設定しましょう」と同じことを言っています。
 
「対象」については、拙著のように影響ピラミッドを使っている本などは見かけませんが、「今を元にせず、幅広く考えましょう」というような説明をよく見かけます。
 
このように「時間」も「対象」も正しく設定しているにもかかわらず、シナリオプランニングの取り組みがうまくいかない理由は何なのでしょうか?
 
今回話している内容を元にすると、うまくいかない理由のひとつに、「今の目の前のことを考える」前提から抜けきらないままシナリオプランニングに取り組んでしまっているという状況があります。
 
たしかに設定としては、シナリオプランニングで定められているとおりの「時間」や「対象」にしています。
 
しかし、”設定”はしているものの、「今の目のまえのことを考える」前提をシナリオプランニングに持ち込んでしまっているので、シナリオプランニングの前提である「将来における不確実な可能性を考える」ことができないのです。
 
「今の目の前のことを考える」前提をシナリオプランニングに持ち込んでしまっているというのは、シナリオプランニングをやりながら、次のように考えてしまっている状態です。
  • こういう未来の設定にすると、うちの○○という技術が活用できる…
  • 顧客が○○を使うことは今も未来も変わらないから、この軸はあり得ない…
  • ○○が騒がれているけど、うちには影響ないから、軸にして考えるまでもない…
私自身も含めて、ここに書いたようなことは、ついつい日常的に考えてしまうことです。そして、たしかに、これらは「今の目の前のことを考える」場合には、間違いではないことだと言えるでしょう。
 
しかし、シナリオプランニングに取り組むことは、この「今の目の前のこと」という前提自体を問い直すことです。
 
まずは自分たちの前提は考慮せずに、「将来における不確実な可能性を考える」ことから始めます。その上で、検討したそれぞれの可能性に「今の目の前のこと」の前提を照らし合わせて、「本当にこういう考え方をして良いのか?」と問い直すことがシナリオプランニングの取り組みの本質です。
 

「前提」を問いただすためのシナリオプランニングの取り組み方とは?

もちろん、これは言うほど簡単ではありません。
 
「前提」とは、なかなか自分たちでは客観的に意識できないものですから、最初からそれを意識的に切り離して考えることはできません。
 
こういう話しをすると、
 
なら、シナリオプランニングに取り組めないじゃないか?
 
という声が聞こえてきそうです。
 
でも、大丈夫です。
 
まずは、ここに書いたようなことをそこまで気にせずにシナリオプランニングに取り組んでみてください。
 
そうすると、シナリオプランニングの考え方に照らし合わせると辻つまが合わないようなところが必ず出てきます。
 
中にはシナリオプランニングの考え方を正しく理解できていないことが原因で、そのようになってしまっていることもあります。
 
しかし、シナリオプランニングの考え方は正しく理解できているのに、なんだかうまくいかない、というところもあるでしょう。
 
そういうポイントこそが、今回お話しした「今の目のまえのことを考える」前提をシナリオプランニングに持ち込んでしまっていることが影響しているポイントかもしれません。
 
このようにシナリオプランニングは、自分たちの「前提」を問い直すための取り組みであると同時に、その「前提」自体に気づくための取り組みでもあるのです。
 
もちろん、何も考えずに形式としてシナリオプランニングに取り組んでいるだけでは、そのような成果を得ることは難しいでしょう。
 
シナリオプランニングの取り組みをとおして「前提に気づき→前提を問い直す」という流れで進んでいけるような設計にしなくてはいけません。
 
その設計さえうまくいけば、最終的に自分たちの「前提」を問い直し、「今の目の前のこと」にとらわれない発想をすることができるようになります。
 
 
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『実践 シナリオ・プランニング』

『実践 シナリオ・プランニング』表紙
「シナリオ・プランニング」とは、組織や個人が未来を見据え、不確実性をチャンス・機会に変えていくための思考法。

シナリオ・プランニングを活用し、自分たちの「シナリオ」を作成することで、過度に悲観的な予測に立って不安に飲み込まれることも、将来の可能性を過度に楽観視することもなく、「健全な危機感」をもって未来を捉え、将来に対する備えをしていくことができるようになります。

本書ではシナリオ・プランニングの理論的な理解はもちろんのこと、シナリオ・プランニングの「実践」をあらゆる組織で無理なく進めていくための方法論、さらには、シナリオ・プランニングの「実践」をもとに、人と組織の成長を促すヒントを解き明かします。